Speaks vol.33 <<勝つためには「まずディフェンスありき」>>
この考え方を身につけると、テニス観が一変するかもしれません。
試合で勝つためには、「まずディフェンスありき」です。
強いボールを打てるから、勝つのではありません。
無理して強いボールばかりを打とうとする人は、
エラーを犯して負けます。
ミスしない人が勝つというのは、確率的に見て明らかな事実です。
でも、優れたディフェンスで受け続けている人が必ず勝つかというと、
実はそうではありませんよね。
そのディフェンス力を上回るオフェンス力を持つ相手と戦うと、
負けてしまいます。
では、そのオフェンスの強い人が勝ち続けるかというと、
また次にはそれを上回るディフェンス力のある人が勝ちます。
これでは堂々巡りなので、違う側面から考えてみましょう。
「強いボールを打ちたい」という人がいます。
あなたもその一人かもしれません。
そのためには、体の使い方を含むいろいろなテクニックが必要ですが、
強いボール打つために、前提として何が必要かを確認してみましょう。
あなたは、打つことを考えるよりも前に、
まず相手が打ってきた強いボールをうまく受けられないことには、
強いボールが打てないのです。
つまりあなたは、いいポジションに移動して、
打ちやすい打点に入り、不必要な予備動作を省いて、
しっかりと受けられることが必要。
自分が「強いボールを打ちたい」からといって、
相手のボールのことを無視するわけにはいきません。
つまり、あなたが強いボールを打つためには、
まず相手の強いボールを受けられなければならない。
これが冒頭に言った「まず、ディフェンスありき」ということなのです。
レベルが上がるとは、すなわちディフェンス力が上がるということ。
受ける力が高くないと、
原則としてハイレベルなテニスはあり得ないということです。
この視点をないがしろにして
「強く打ちたい」「思いっ切り叩きたい」ということばかりを考えても、
それは空理空論。
実際のテニスでは、サーブを除くすべてのショットにおいて
受けてからではないと、打ち返せないからです。
コミュニケーションということを例に当てはめて、考えてみましょう。
自分にはすごく立派な考え方がある。
これを相手に伝えたくて、仕方がありません。
でも、いくら自分がすごく立派なことを言いたいのだとしても、
その前提として、相手の言っている話について理解が及ばないと、
発言できないということです。
自分の話ばかりをしようとすると、それでは会話にならない。
相手の話をきちんと聞ける人だけが、
コミュニケーションにおいては的を射た話ができるのです。
テニスも会話と同様、人を相手とする営みです。
その場合には、まず「受け」。
アマチュアプレーヤーは、打つことばかりを考えています。
「受ける」という行為に、まったく気づいていない人がほとんどなのです。
逆に「受けられるようになると、あなたは自然と打てるようになる」
ということも、知っておいてください。
相手の物すごく跳ね上がってくるトップスピンストロークを
適切に受けられるようになったあなたは、
すごく跳ね上がるトップスピンストロークを、
自らも打てるようなレベルに必ず到達するのです。
このことについては、回を改めて詳しくお伝えします。
【解説】スポーツラーニング・黒岩高徳
【構成】テニスライター・吉田正広