Speaks vol.223
<<テニスこそ「モヤモヤ力」が試される!>>
前回のスピークスでは、
「モヤモヤ力」についてご紹介しました。
かいつまんで振り返ると、
人間関係にせよ、環境問題にせよ、恋愛にせよ、お金にせよ、介護にせよ、
直面する課題についてどうすれば正解か今すぐ答えが出ない以上は、
モヤモヤと考え続けるしかありません。
この不確実性に耐え得る力が、
詩人ジョン・キーズの提唱した「モヤモヤ力」でした。
とはいえ、すぐに答えを出したくなるのが、
人情というものです。
恋愛なら、脈があるのかないのか、はっきりさせたい。
お金なら、生活していけるのかどうか、白黒つけたい。
今すぐにでも答えを知りたいのだけれど、
それはどうしても叶わないのだから、
モヤモヤし続けるしかないのです。
「生きる意味って何だろう?」
だれもが今までで一度は、
考えたことがある命題かもしれません。
だけどすぐに答えが出るはずなどないのです。
モヤモヤと考え続けるしかありません。
さてこの「モヤモヤ力」ですが、
高い人と低い人とがいます。
分類すると、答えを急がずに考え続けられる人が、
「モヤモヤ力」が高い人。
一方「モヤモヤ力」が低い人とは、
「テキパキ力」が高いと、言い換えられます。
スパッと効率的に答えを出せる人は、
「モヤモヤ力」が低い反面「テキパキ力」が高いと言え、
一般的には、社会で高く評価されもするでしょう。
だけど地球温暖化にせよ、戦争にせよ、原発にせよ、人種差別にせよ、
人類が抱えている問題のなかで、スパッと答えを出せるなんてことは、
「ほとんどない」のが実際なのです。
つまりスパッと出された答えといえば、
既存の知識を羅列して、
それらしく見せているだけの場合が少なくないでしょう。
これはあたかも学校教育の試験で出題される、
空欄を埋める問いに対する答えを、
選択肢の中から見つけ出すだけのようなもの。
それができる能力も確かに必要だけど、
世の中にあるほとんどの直面する問題は、
「何々ついてあなたの意見を自由に論ぜよ」といういわば記述式であり、
答えがあってないようなものばかり。
たとえば恋愛について、
絶対的な「正しさ」も「間違い」もないのであり、
不確実な状況を受け入れて耐え抜く力がなければ実らないから、
非常にじれったい。
だから「モヤモヤ力」は、
一般的には「非効率」などと揶揄されがちかもしれません。
だけど実はテニスこそ、
すぐに答えを出す「テキパキ力」よりも、
考え続ける「モヤモヤ力」を試される競技なのだと思うのです。
テニスの試合というのは、1ポイント、1球ごとに、
答えの出ない問いが出題され続けるようなもの。
この場面でポイントを取るには、
「攻めればいいのか?」
「守ればいいのか?」
そんなの、やってみなければ分かりません。
なのに「どっちが正解か?」の答えを知りたがるから、
かえって不安になるのです。
「スピンで打ち込むべきか?」
「スライスでしのぐべきか?」
白黒つけられません。
「グレーな戦況」「灰色の心理状態」を受け入れて、
前に進むしかないのです。
ですからテニスというスポーツは印象に反して、
「楽しい」ことばかりではなく、
「気持ち悪い」側面がいっぱいあります。
特に試合ではモヤモヤとして、
時として吐きそうになることだってあるでしょう。
一人だけで戦うことの重圧……。
「モヤモヤ力」が高くないと、身がもたないのです。
僕の人生も、周りからずっと問われ続け、
自分でも、問い続けてきたのではないかと顧みます。
「テニスなんかで本当に、生きていけるのか?」
まさに「モヤモヤ力」が、
試されてきた半生だったと言えるのかもしれません。
だけど53歳になった今も、生きています。
次回に続きます。
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広
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