Speaks vol.32 <<「遊び心」がものすごく大事!>>
「遊び心」というのものが、非常に大切だと思っています。
なぜ、そう思うようになったか、エピソードをご紹介します。
昔、ボレーの練習に取り組んでいたときに、
自分の中ではカッチリとフォームを決めて打ちたいと思っていました。
でも、ネットに出るとほとんど時間的な余裕がない。
フォームを決めようとしても、決まらない。
そんなときにコーチに教えられたのが、「ボレーは遊ぶ」ということでした。
ボールが飛んできたら遊び感覚で、跳ね返す、ただそれだけ。
フォームなんて、まぁどうでもよい。
相手コート内にボールが落ちさえすれば、それでよいというのです!
ちょっと極端な物言いではあったものの、
確かにそうしたほうが、いろんなボールに柔軟に、素早く対応しやすくなりました。
「形の決まったよいボレーヤーはいない」と言われるのは、そのためでしょう。
試合でも、カチッと決めようとすると、うまくいかなかったりしますよね。
「さぁさぁ、どこにでも打っていらっしゃい!」くらいの「遊び心」を持ってプレーしたほうが、
大抵うまくいくものです。
「遊び心」があるとは、心に幅があるということです。
プレーの幅も広がるということです。
「真剣にやる」とは、しかめ面してやることでは、必ずしもありません。
遊びながら、笑いながら、真剣にやることもできるのです。
しかめ面してやるのは、「真剣っぽく」やっている、
そのように見せかけているだけの「そぶり」であることが、少なくないでしょう。
人間は快楽を求めますから、真剣にやりたいことには
楽しもうとする「遊び心」が、本来的には不可欠だといえます。
眉間にしわを寄せているほうが、何となく集中できると、
無意識のうちに思い込んでいませんか?
でもそれは「遊び心」が失われた状態。余裕がありません。
余裕がないと、幅が狭くなってしまいます。
何の幅が狭くなるかというと、
思考の幅、視野の幅、そして眉間のしわの幅……。
テニスでいえば、しかめ面して真面目にやっている人ほど、
視野が狭くなりがちで、ほかの手段を試そうとする思考の幅が失われます。
遊び感覚でプレーしている人のほうが案外うまくなるのは、
余裕があっていろんな手段を試そうとする広い視野を持っているから。
そのほうが、自分なりのテニスを、
いち早く見つけ出すことができるようになるのです。
まとめるとすれば、真剣に遊んでください。
テニスが一気に上達するコツです。
思考も視野も、眉間のしわの幅も、グッと広がりますから!
【記事構成】テニスライター・吉田正広