Speaks vol.224
<<ショットのパワーだけでは語れない「ビッグ4」強さの理由>>
前回は、「テニスにおけるモヤモヤ力」をテーマに、
スピークスをお届けしました。
「モヤモヤ力」とは簡単に言うと、不確実な状況に耐え得る力。
答えを早急に求めず、モヤモヤと考え続ける力のことです。
もちろんスパッと答えを出せれば気持ちいいけれど、
それができない問題は、世界情勢から私生活、
そしてスポーツやリクリエーションにいたるまで、数知れません。
だからこそ、その不確実な状況に耐えて、
あせることなくじっくり最適解を探ろうとする力こそ、
「モヤモヤ力」というわけです。
テニスにおいて、ある場面でポイントを取るには、
「攻めるのがいいのか?」「守るのがいいのか?」など、
どっちが正解かなんて、実際にやってみるまで分かりません。
分かりもしないのに正解を知りたがるから、
かえって不安になるのですね。
「スピンで打ち込むべきか?」
「スライスでしのぐべきか?」
どちらがいいかなんて、白黒つけられません。
前回お伝えしたとおり、とりわけテニスというスポーツは、
この「モヤモヤ力」が強くないと、身が持たないのです。
なぜならサッカーやラグビー、バスケなどと違って、
テニスは試合終了時間が定められていない競技。
なので引き分けもなく、勝敗が決着するまでは、
日をまたいでまで試合が続けられるのが、
テニスというゲームのルールだからです。
そのような競技特性を踏まえると、
試合が始まってから終了するまでの間、
「ずーっとモヤモヤし続けるスポーツ」とも言い換えられます。
ですから「楽しい」ばかりではなく、
「気持ち悪い」思いもたくさんします。
ここに、ショットのパワーだけでは語れない、
テニスが強いプレーヤーに関する秘訣を探れそうです。
ビッグ4よりも良いショットを打つ選手はたくさんいます。
しかしなぜ、多くの選手がそこへたどり着けないのか?
ほかの選手たちと比べて「モヤモヤ力」が、
極めて高いからだと断言できます。
世界ランキング1位通算在位期間は、
男女を通じて史上初となる400週を達成(2023年11月20日現在)。
少なくとも数字のうえでは頂点に上り詰めたノバク・ジョコビッチは、
なぜあんなに強いのか?
特に接戦になればなるほど、
なぜあんなに強みを発揮できるのか?
それはすぐに結果を出そうとして、
勝ちを急がないからでしょう。
「ああでもない……」「こうでもない……」
「いや、ああかな?」「こうかもしれない?」と、
答えを焦らず、ずっと考え続ける「モヤモヤ力」が、
圧倒的に高いプレーヤーなのです。
かくいう僕も傾向として、
接戦をものにするタイプの一人です。
確かに、ベーグルでスパッと勝てれば気持ちいいけれど、
テニスの試合というのはもちろん、
いつもそうできるわけではありません。
むしろ同じ競技レベルのプレーヤーが大会に集うわけだから、
競り合いになる試合展開のほうが大半。
そんななかでファイナルセットのタイブレークまでもつれると、
僕は高い確率で勝利をものにする機会が多いと言えます。
一般的にはネガティブにとらえられがちかもしれませんけれども、
グズグズ、ウダウダと悩み続けるのが得意なのだと思います。
すぐに答えを出すことができないテニスだからこそ、
不確実な状況にモヤモヤと耐え得る力、
すなわち「ネガティブ・ケイパビリティ」がモノを言う。
さてテニスだけでなく「長丁場の人生」も、
実はスパッと答えを出せる「テキパキ力」に比して、
悩み続けることのできる「モヤモヤ力」が、
モノを言うのではないでしょうか?
前回述べたように「テニスなんかで生きていけるのか?」と、
周囲の人からさんざん言われ続けてきた僕の半生でした。
だけど53歳になった今も、こうして生きています。
今後の、僕が掲げる「モヤモヤテーマ」は、
「どうすればレッスンの内容について、
皆さんにもっと上手く伝えられるか?」です。
ずーっと、そのことばかり、
それこそモヤモヤしながら、考え続けてきました。
その答えは、未だ出ていないのかもしれません。
だからこそこれからも、
最適解を探り続けようと思います。
タイパ(タイムパフォーマンス)や効率性ばかりが、
追求されがちな現代社会。
だからこそ、その対局である「モヤモヤ力」に、
一層の価値を見出すことができると確信しています!
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広
さあ、このSpeaksを読んだらさっそく練習しましょう!!レッスンへGO!!
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