Speaks vol.29  <<労力配分の法則>>

あなたの持っている労力は有限であり、
ある一つのことを成し遂げるには、その限られた労力を
いかにうまく配分するかが、とても大切なポイントになります。
偏った力の集中のさせ方では、アンバランスを招き、支障をきたすでしょう。

分かりやすくここでは、「サービスを打つ」ことを
例にとって考えてみましょう。

あなたはサービスを打つためには、
「構える」「狙う」「打つ」「打ったら備える」などの
項目に対して、それぞれ労力を配分する必要があります。

強く打つことにばかりにとらわれていると、
狙ったり、打ったあとに備えたりすることに、
気が回らなくなってしまう。

物事がうまくいかなくなる原因は案外、
こうしたアンバランスな労力配分の行われ方にあって、
意識しやすい「打つ」ことにばかりとらわれてしまうから、
さまざまな不都合が発生するわけです。

もちろん試合になると練習と違って、
相手の存在があり、
またアウトしてもOKにしてもらえるエクスキューズもないわけですから、
よりプレッシャーがかかる。
つまりプレッシャーに耐えるのにも労力は必要であって、
その配分を工夫しなければ、ますますうまくいかなくなるのです。
「練習だと打てるのに、試合だとできない」と悩む原因は、ズバリこれ。

こういうと「労力が限られているのであれば、上達もしないのか?」
と言う人が出てきますが、もちろんそんなことはありません。

サービスを練習し、慣れることで、あなたはより少ない労力で、
今と同じ水準のサービスが打てるようになり、
余った労力をほかの項目に再配分できるようになるのです。

分かりやすい例を挙げましょう。
新社会人になって、あなたは初めてラッシュアワーの満員電車を
経験することになったとします。
最初の1週間くらいはきつくて、体力的にも精神的にもまいるでしょう。

でも、毎日それが繰り返されるうちに、
あなたは本を読んだり音楽を聴いたり、
あるいは語学の勉強だって、できるまでに変ります。

つまりあなたは満員電車のプレッシャーに慣れて、
労力を勉強することなどにも、再配分できるようになったということ!
物事の上達のプロセスは、この「労力配分の法則」に従って行われます。

ただし、テニスは満員電車と違ってやることがより高度だから、
単に回数をこなすだけでは、不十分。
練習や試合を通じて「こういう理由で、うまくいった!」
「こういう工夫により、勝てた!」といったように、
体験したプロセスを自分なりに咀嚼することで、それらは身になります。

ぜひ、「労力配分の法則」をうまく利用して、
成功を勝ち取ってください!

【記事構成】テニスライター・吉田正広