Speaks vol.28  <<ナチュラルに動くコツ>>

今回は、自然に動作するためのメカニズムのようなことを、お話ししましょう。

例えばテニスのフォアハンドストローク。
皆さん素振りだと、それこそロジャー・フェデラーにもそっくりな
自然のスイングを行えるわけですが、
ボールを打つとなると、途端にギクシャクとして、振り方が不自然になる。
こういうことは、ここでクドクド説明しなくても、
きっと嫌というほど皆さん経験しているはずです!

そこで、右腕を自然に、より自然に振ろうと試みるのだけれども、
どうにもその動きはぎこちない。
このお悩みを、解決したいと思います。

結論から言うと、「意識するほど、ギクシャクする」ということです。
私たちは学習を繰り返すと、その運動が下意識に落ちます。
すると、何も意識しなくても、動作をナチュラルにリピートできるようになる。
これは何も特別なことではなく、人間なら誰もが持っている基本能力。

例えば自転車を例に取りましょう。
1回乗れるようになると、ペダルの踏み方やハンドルの切り方など、
一切意識しなくなる。
自動車の運転も、そうでしょう。
慣れれば「あれ、クラッチはどっち!?」などといちいち考えません。
下意識で動作するとは、そういうことです。
自分でも意識しない(できない)くらい動きが自然。
プロのスイングはまさに、こんなイメージでなされます。

ただし、下意識は無意識ではない。
特にテニスの場合は、自転車や自動車の運転のような
単純作業ではないから、「動きのきっかけ」を何か与えないと、
下意識は動作をスタートしない、ここが厄介といえば厄介です。

右腕を振ることをきっかけに使うと、
動きが意識的だからギクシャクすると、説明しました。
では、何を、どうすればいい?

スイングに「間接的」に作用する、左腕です。
もっと詳しく言うと、左・肩甲骨と左・股関節とを結ぶ軸。
これを「引く」ことを意識し、動作のきっかけとして使えば、
右腕はそれこそ勝手に、つまりナチュラルに、スパッと振り出されます。
だって、左側を引いて右側だけを止めておくなどということは、できませんから!

まとめましょう。
ナチュラルに動作するには、
その動作と「直接的」に関係があるところを意識しては、ダメ。
案外、意識を向けるポイントは意外なところにあって、
右利きのフォアハンドなら、それは体の左側ということです。

ナチュラルに動くとは、つまりはそういうこと。
工夫次第で、スポーツ以外にも考え方や行動様式にも応用可能。
ぜひお役立てください。
これが「極み」だということです。

【記事構成】テニスライター・吉田正広