Speaks vol.27  <<優勝するつもりでいこう!>>

勝負は、心の底から勝てると思い込めるかどうか、
これで決着します。
つまり、実際には戦う前から、決まっている。

「勝てそうもない」と思っている人が勝てるわけはなくて、
「勝つに違いない」と本気で思っている人が、勝つのです。
勝利者インタビューで、「勝ちにきました!」というコメントはあっても、
「まさか勝てるとは思っていませんでした」というのは滅多に聞かない。
仮にあったとしても、それは選手の本意ではなく、
その場の空気を読んで発したコメントに違いありません。

勝てると思い込み、勝ちにいく人は、相応の態度で臨みます。
テンションも高いです。
一方、負けるかもしれないと思っている人、
あるいは勝とうとも思っていないという人は、どうしたって注意力が散漫。
それはまるで記念受験のようなもので、
「とりあえず参加しておこう」という程度の態度では、合格を望むべくもありません。
受験に合格するのは、「自分は受かる!」と本気で思い込んでいる人たちです。

勝負する前から、自分で敗戦を決めてしまっているということは、ないでしょうか?
「負けるだろうな」「負けるかもしれない」では、自ら負けようとしているようなもの。
思考と肉体は常にリンクしていて、
考え方が弱気だと、パフォーマンスは必ず低下するということを、忘れないでください。

話は少し脱線しますが、
人間には「自己防衛本能」というのが備わっていて、
運動強度がある一定のレベルに達すると、守りに入る指令が発せられます。
どこから発せられるかというと、例えば走っていて、
疲れたからもうやめようと判断を下すのは、まず思考。
肉体は、本当はまだ頑張れるのに、
5~6割のレベルで思考がストップをかけるそうです。

ところが一流のアスリートは、その限界値が驚くほど高く、
肉体の限界が9割程度に到達するまで、思考はストップの指令を出しません。
その水準まで粘り強く思考を引っ張って、肉体を追い込めるということ。
そこから自信を培い、「勝てる」と本気で思い込んで試合に臨むから、勝つわけです。

レベルの差こそあれ、そのメカニズムは我々一般人でも同様だと考えられています。
思考の上で、本気で「勝てる」と思い込めるかどうかが極めて重要。
ときどき、技術が未熟な人であっても、大活躍することがありますよね。
「絶対に負けたくない」と強く思い、挙句の果てに足をつったりする。
これは、思考よりも先に肉体の方がストップの指令を出した珍しいケースですが、
その場合、足をつった人のほうが、案外勝利したりする。
本気で勝つつもりで、戦っているからです。

「明日は大事な仕事があるから……」といって
そこそこのレベルで身を引いてしまっては勝てないし、試合に出る意味もありません。
本気で勝とうとして戦わなければ、そこに成長の種は見つけられないからです。
試合に出るのなら、自分の技術レベルがどうあれ、必ず「優勝」するつもりでいきましょう。
得るものは、大きいはずです!

【記事構成】テニスライター・吉田正広