Speaks vol.25  <<「技術」を使うのは、何のため?>>

技術を使いこなすために皆さん努力しますが、
それは「何のため?」ということを、考えたことがあるでしょうか?

テニスの技術は突き詰めて言うと、試合に勝つために使う。
そのために「ボールを意思どおりに操れるようになる」というのが、
テニスでいうところの必要な技術の使い方になります。

つまりプレーヤーが最も意識しなくてはならないのは、
技術を使って、制約(コートの広さやネット、対戦相手の位置)に注意しながら
ボールを狙いどおりに返すということ。
相手コートに入れるということです。
これが技術を使うことの「目的」。

こんなことは当たり前のように思われるかもしれませんが、
案外見落としがちな盲点です。

例えば、本当はボールを狙いどおりコントロールするために、
トップスピンを打つ練習をするのに、
いつの間にかスピンをかけることが、目的になっていたりします。
そうしているうちに、本来必要な「狙う」という行為がおろそかになり、
誤った目的を持ってしまって、もともとの目的がかなえられなくなる。

もちろん、「狙いなんて、どうでもいい」 「スピードさえ出ればいい!」ということを楽しみにしてテニスに取り組む姿勢を、
否定するつもりはありません。ただしそういう人は、
「なぜ、勝てないんだろう」とか、ウダウダ言わないこと!(笑)

「勝つ」ということは、本当に大変なことです。
「気持ちよく、ガンガン打てればそれでよい」という自己満足では、とうてい達成できない。
勝つためには、自分にとって気持ちのよくないことや、
我慢しなければならないことも、いっぱいやる必要があります。

ハードヒットしたいけど、我慢してつないで、相手コートに返球する「辛抱」も必要。

先述したように、プレーヤーが最も意識しなければならないのは、
「技術を使って、制約がある中で狙いどおりに返す」ということなのです。
この「目的」を、忘れないようにしましょう。

スピンをかけることや、ボールをよく見ること、足をしっかりと動かすことその他は、
「目的」ではなく「手段」。
「目的」と「手段」を、取り違えないように注意してください。

テニスに限らず、手段を目的化してしまう誤りは、
いろんな場面で、いろんな人に見受けられるものです。
美しく健康になるためにダイエットをするのに、
痩せることが目的になる。
あるいは、幸せな人生を送るために勉強をするのに、
いつの間にか受験に合格することが目的になる。
冷静にはたから見ればおかしな話ですが、
「それが絶対に正しい」と当事者が思い込んでしまうことは、よくあることです。

正しい「目的」をインプットしておきましょう。
ときに、何のためのテニスなのか、何のための練習なのか、
「基本」に立ち返ってみるとよいと思います。
あなたのテニスがドラマチックに変化することは、間違いありません。

【記事構成】テニスライター・吉田正広