Speaks vol.24  <<自分の資質について、考える>>

前回は「テニスはコンタクトスポーツ」というお話をしました。
逃げずに、相手と戦う姿勢が大切。
そうして競い合ううちに、自分のテニスについて、よく分かるようになってきます。

今回は、自分と向き合うことの必要性について、考えてみましょう。
もしかすると、ショックを受ける人もいるかもしれませんが(笑)、
自分を高めるよりよい考え方を、皆さんに提示できるに違いありません。

皆さんは「自分の資質」ということについて、考えたことがありますか?
それは、「自分の強み」と言い換えてみてもよいでしょう。
できる限り客観的に自分を観察して、どういった点が強みなのかを、探ってみてください。

テニスでいえば、フォアの強打が得意だとします。
そしてフォアが大好きだということを、自覚している。
そうであれば、どんどんそこを伸ばすように、励んでください。
昔から「好きこそものの上手なれ」といいます。
好きなことは飽きずに努力できるから、自然に上達していくという意味。
この場合のあなたの資質は、間違いなくフォアハンドです。
フォアを練習することであなたらしさが際立ち、輝きを増していくことになるでしょう。

テニスに限ったことではなくて、どんな人にも「向き・不向き」というものは、必ずある。
できる限り、自分の資質に向いていることをやり、
重点的に力を注ぐようにすることが、成功するためのポイントです。

逆に言えば、「不向きなことに適性を求めない」ということ。
残念ながら、資質のないところにあなたが望む結果は、まず得られません。
「どうしたら人間は変わりますか?」ということが散々言われますが、
根本的な部分では、人間は「変わらない」。
人は「ないものねだり」をしたがるから、自分にない資質に憧れるきらいがありますが、
あなたに「ないものは、ない」のです。

それよりも、今現在持っているあなたらしくて素晴らしい資質に目を向けて、
そちらを徹底的に育んでいくほうが、成功はかなうということ。

さてこう綴ると、「それでは、不向きなこと、苦手なことは、やらなくてもいいんだ!」と
考えてしまう人も、なかにはいるでしょう。

いくら苦手なバックハンドを練習したところで、
フォアハンドほどの直接的なハイパフォーマンスにはつながらないのだとしたら、
「バックは練習したくない」、そういう気持ちになるのも無理はありません。

でも、苦手なことにも、最低限の力を注ぐ必要はあるのです。
これは、いくらフォアが得意だといっても、1球目のバックをミスしたら、
そのフォアさえ打たせてもらえなくなるから。
弱くても、1本しのげるバックハンドを持っておけば、フォアを使えるチャンスは巡ってきます。
つまり、苦手なバックも間接的には、強みであるフォアを活かすための助けになるということです。

苦手はあっていいし、それを積極的に強みに高めるほどの努力は、
ひとまずはしなくていい。
率直に言えば、そんなことをしている時間があるなら、
強みをどんどん伸ばすために努力したほうが、効率的です。

ただし、苦手や弱みから目をそむけて、完全に逃げてしまってはいけません。
得意になる必要はないけれど、定められたルールの中で、
一応失敗しない程度の基礎を整えておく必要は、あります。

資質を育む一方で、苦手を「並」にすることも考えてみてください。
これが、テニスはもちろんですが、それ以外にも及ぶ「成功するための考え方」です。

【記事構成】テニスライター・吉田正広