Speaks vol.23  <<テニスはコンタクトスポーツ>>

技量、体力が同等の場合、
試合で勝つか負けるかを決めるのはもう、
ハートひとつ、つまり気持ちしだいだといえます。

その一打を、「強気」で打てるかどうか。
「入れなきゃ」と怖気づいて、「引いてしまう」のか。
この違いでしかない、といっても言いすぎではありません。

「テニスはコンタクトスポーツである」という理解が必要です。
つまりは、ぶつかり合い。
格闘技に近い、というより格闘技そのものです。
ただ、コンタクトする対象が直接の対戦相手ではなくて、
その分身であるボールであるところが、ぶつかり合うイメージになりにくいだけ。

対戦相手の意思が集約された一打こそボールなのですから、
それはボクシングでいうところの「パンチ」と、まったく同じなわけです。
その黄色い一撃が、あなたに襲いかかってくるパンチだと考えると、
「気持ちの上で、引いたら負ける」「強気で打ち切ろう」
と思えるのではないでしょうか。

では、なぜ肝心なところで、引いてしまうのか?
それはそもそも、「戦う」ところに気持ちが向いていないから。
戦闘モードに意図的にならないと、スイッチは日常モードから
切り替わらないのが、普通です。
しかも人間は弱いですから、自分で自分の気持ちを盛り上げないと、
士気はどんどんなえてしまう。
自ら鼓舞し、強気を作り出すことが、「引かない」ためには大事なわけです。

テニスは、打っているよりも打っていない時間のほうが、長い競技です。
あのインターバルは何のためにあるのかというと、
気持ちを鼓舞し、「よし、いくぞ!」と切り替えるためです。
強気でいって、失敗したとしても、それは結果でしかない。
だからといって、引いて打ったら成功していたかというと、
そんなことは分からないのです。
少なくとも、相手に「影響力」を与えられるのは、
弱気ではなく、強気の姿勢でしょう。

もっと具体的なケースを考えてみると、
「ボールを見ているかどうか」が気の強弱を示すバロメーター。
強気でいる、向かう姿勢でいるときには、ボールをよく見ているものです。
逆に弱気でいると、ついボールから目を逸らしがち。
入るかどうかが気になり、相手コートに目がいくなどして、
最後まで見ることができなくなるのです。
その結果ミスショットして、ますます滅入ってしまう。
思い当たるふしも、あるのではないでしょうか?

テニスは、「頭突き合い」のスポーツだと思って臨むくらいで、ちょうどいい(笑)
引いたら、放り出されて次の一撃でさらに痛い目を見ます。
目を逸らさずに、ボールに目線をしっかりと据えることが、大事です。
「テニスはコンタクトスポーツ」。引いたら負ける。常に強気でいきましょう!

【記事構成】テニスライター・吉田正広