Speaks vol.209
  <<器を大きくするトレーニング>>

前回はゴルフのプレーオフのとき、
対戦相手のパットが入ったら自分が負けるという場面で、
タイガー・ウッズは本気で「入れ!」と願うエピソードについて紹介しました。

これは「勝つ」という結果を単に求めるのではなく、
相手と切磋琢磨する過程を楽しみたい思いの表れ。

それと同時にこのとき、
勝利に目がくらんで「外せ!」と願う人とでは、
器の大きさの違いが明白であり、
これこそウッズが最強選手たるゆえんだと、
考察を試みました。

またこのエピソードは、
記録にこだわらないラファエル・ナダルのインタビュー内容に符合。
前人未到の全仏オープン14勝、
およびグランドスラムタイトル獲得数が史上最多の22回といった数に、
ナダルはあまり興味がないといいます。

競技は違えど、
偉大なチャンピオンとして共通する精神性が、
汲み取れるのではないでしょうか。

ひるがえって私たち一般プレーヤーといえば、
相手のアドバンテージを願って「入れ!」とは、
なかなか思えるものではありません。

つい勝利や成功などの結果に、
とらわれてしまいがちです。

たとえば相手のセカンドサービスがダブルフォールトしたら、
自分が念願の優勝を果たせるというとき、
思わず「外せ!」と願ってしまうのではないでしょうか?

勝ちたい欲が、どうしてもあるからですね。

どうすればいいか?
「器を大きくするトレーニング」をしてみては、
というのが今回のご提案。

「入れ!」と、言葉だけではなく、
心から本気で願うのです。

僕を含め当初は精神的抵抗感を覚える人が、
少なくないかもしれません。
しかしそれは今の器では、受け入れられないサイズだから。

抵抗感が強いほど、
いいか悪いかは別として、
器はまだまだ小さいといえるでしょう。

もちろんこのままでは、
メンタルタフネス的に劣位です。

そこで私たちの器を大きくするための、
4つのメンタルレベルについて改めて復習しておきましょう。

「1.挑戦(CHALLENGE)」
「2.ビビり(CHOKE)」
「3.怒り(ANGER)」
「4.あきらめ(TANK)」

「外せ!」は「2.ビビり(CHOKE)」か「3.怒り(ANGER)」であり、
「入れ!」は「1.挑戦(CHALLENGE)」の最高位。

心理学的にこの序列が証明されている以上、
目指すべきは「入れ!」を願う一択以外あり得ないはずです。

そしてこれを、いろんな場面に当てはめてみる。

たとえばビジネスシーンであれば、
「苦手な顧客だ。契約を取れなかったらどうしよう…」ではなくて、
「お客様のご要望に応えられるよう、最高のプランを提案しよう!」というチャレンジ精神で、
交渉の場に臨んでみてはいかがでしょうか。

あるいは家事であれば、
「子どもの面倒を見るのは大変だ…」と思うのではなく、
「子どもと一緒に楽しもう!」などという前向きな気持ちで、
子育てに挑んでみてはいかがでしょうか?

それができるようになるのが、
「器を大きくするトレーニング」というわけです。

僕は仕事上、いろんな立場の人に会いますが、
ビジネスマンと話すときには正直なところ、
仕事内容のディティールまではわからないことが多いです。

込み入った専門的な話に及ぶと全然理解できなくて、
「4.あきらめ(TANK)」モードに突入しかねません…。

しかし「つまりはこういうことか」というマクロ的な視点で捉えようと試みると、
何とか話についていけて、
無視していたら取りこぼしていたかもしれない有益な情報も、
スルーせずに取り込めたことがたびたびあります。

さて改めまして、
冒頭でウッズやナダルは結果ではなく、
過程を楽しんでいると述べました。

もちろん相手のサービスを「入れ!」と願ったからといって、
あなたのリターンが必ず返る結果になるとは限りません。

しかしその過程を楽しんで、
「なんとか返してやろう」と、
チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

相手がビッグサーバーであればあるほど、
ワクワクすると思います!

あるいは私たちテニスプレーヤーが、
そもそも大会に出るのはなぜでしょうか?
優勝するのは1人だけ。
その他全員は、確実に負けるのです。

それほどまでに低い確率を覚悟の上で、
私たちテニスプレーヤーが大会に参加するのは、
その「過程」が存在するからですね。

ナダルのインタビューはいつでも、
結果ではなく、過程の話をしています。
それが「現役」ということなのでしょう。

昔話に花を咲かせるのは、
すでに「引退後」のたそがれ世代。

「現役」とは、
プロセスの中にいる人のことを、
いうのだと思います。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広

さあ、このSpeaksを読んだらさっそく練習しましょう!!レッスンへGO!!
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