Speaks vol.208
  <<入れ!>>

前回は、前人未到の全仏V14を達成したラファエル・ナダルが、
「記録のためにやっているわけじゃない」と、
インタビューで受け応えするエピソードを紹介し、
人間としての器の大きさについて、考察してみました。

記録は単なる目標であり、
テニスをプレーする本来的な目的は、
充実のキャリアをかなえるため。

ひいては自分を含め、
周りの人々も幸せにするため。

実際私たちテニスファンは、
ナダルを始めビッグ3たちと同時代に生き、
ライブで彼らのプレーを見られる奇跡に、
幸せを感じずにいられません。

今回は同様に、
人間としての器の大きさを物語るエピソードとして有名な、
タイガー・ウッズの逸話を紹介しましょう。

最終日の最終ホールに同スコアだったプレーヤー同士で行われる、
優勝決定戦のプレーオフ。

決められたら負けるという対戦相手のパッドを、
ウッズは本気で「入れ!」と願うのだと言います。

自分さえ勝てばいいのだとしたら、
普通は「外せ!」でしょう。

しかしウッズは勝ち負けを度外視し、
もっと対戦相手と競い合いたいから、
「入れ!」なのだそうです。

プレーオフの緊迫した場面で、
相手のパッドを「入れ!」と願うのは、
気持ちの上で簡単ではありません。

本音ではどうしても、
勝ちたい欲があるからです。

やはり「外せ!」と願いたくなるのが、
人間のサガではないでしょうか。

しかしここで「外せ!」と願う人と、
「入れ!」と願う人とでは、
器の大きさの違いは、明々白々。

相手のパッドを「入れ!」と願える、
人間としての器の大きさ、
これこそウッズが最強選手たるゆえんでしょう。

メンタルタフネス的にも、ウッズの強さは説明できます。
メンタルタフネスには、次の4つのレベルがあります。

「1.挑戦(CHALLENGE)」
「2.ビビり(CHOKE)」
「3.怒り(ANGER)」
「4.あきらめ(TANK)」

「外せ!」はメンタルレベル的には、
「2.ビビり(CHOKE)」か「3.怒り(ANGER)」に位置づけられるでしょう。
「4.あきらめ(TANK)」は、「3.怒り(ANGER)」にすら達していません。

ウッズが実践する「入れ!」の次元は、
「1.挑戦(CHALLENGE)」の精神だから、
最高位というわけです!

たずさわる種目やレベルの違いこそあれ私たちも強くなるには、
目先の勝ち負けなどにこだわるのではなく、
もっと視野を広げた人間としての器を大きくするほうに、
注力するのが先決ではないでしょうか。

ナダルのいう、勝ち負けや記録のためではなく、
自分が幸せになるために、
周りの人々を幸せにするために、プレーする。

次回はこの考え方を、さらに深めていきます。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広

さあ、このSpeaksを読んだらさっそく練習しましょう!!レッスンへGO!!
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