Speaks vol.189
  <<手薄感を認めると練習効率がアップする>>

練習とは、意識する対象となるテーマを持つことだと、
前回説明しました。

たとえば打ち方をテーマとした練習をするときには、
打ち方に意識を集中します。

なのに飛んでいくボールが、
入るか入らないかの結果に意識が向いてしまいやすい。
これが「テーマのすり替え問題」だという指摘をしました。

ほかにも、攻撃的に打つのがテーマのマッチ練習なのに、
勝敗が気になって、つい守備的になってしまう、など。

このテーマのすり変え問題に対処する方法として、
「手薄感を認める」というところで、前回は締めくくりました。
今回は、さらに話を深めます。

「手薄感を認める」とは、どういうことか?
打ち方の練習をしているときには、
ボールをコートに入れる意識は手薄になるけれど、
「練習としては良し」とする考え方です。

だけどみんな、それを嫌がりますよね。
打ち方も、ボールの結果も、勝敗も、
全部を同時に、手に入れたいのです。

だけど結論をいってしまうと、それは無理な話。
そうすると逆に、練習の効率が下がってしまいます。

「手薄になるものだ」という前提で、
テーマは絞り込んでやったほうが、練習効率は上がります。
ほかは手薄になってもいいと認めると、
不安なく、ひとつのテーマに集中して練習できるからです。

世の中にはさまざまな練習がありますが、
その本質は突き詰めると、
意識の向け方の練習といえます。

あるテーマを絞り込んで、
意識をそこへ集中させて動作を何度も繰り返します。

ちなみにこれについて仏教では、
単純な動作を意図的に繰り返すことが集中だと、定義されています。
意図的とは、すなわち意識すること。

複雑な動作を意識せず繰り返しても、
ただムチャクチャに動いてるだけで、
練習にはなりませんからね(笑)。

メカニズムを説明します。
意識して繰り返すと、その動作を脳は記憶し、
やがて、意識しなくてもできるようになってきます。
これが、下意識に落ちた状態です。

自転車に乗るのも、自動車を運転するのも、
何年もやっている動きは下意識に落ちています。

はじめは、ペダルのこぎ方や、
ハンドルの切り方を意識していたとしても、
繰り返しによりやがて、
人間の持つ学習能力により必ず下意識に落ちるのです。

自分は、球出しを30年していますが、
何も意識していません。
下意識に落ちているから、意識しなくてもできるのです。

もちろん、繰り返すべき量や時間は人によって異なるでしょうけれども、
それが下意識に落ちて定着してきたら、
新しいテーマへ意識を向け変えるのが、
効率の良い練習といえます。

換言すれば、いつまで経っても下意識に落ちないとしたら、
「テーマのすり替え問題」がその人のなかでは頻繁に起こっていて、
効率が下がっていると疑われます。

では具体的に、合理的な打ち方で、安定性の高いショットが、
攻撃的に打てるようになるプロセスを簡略的に説明すると、次のとおり。

打ち方を練習するときは、
結果を気にせず(あえて手薄にして)動作を繰り返せば、
打ち方は意識しなくてもできるようになって、下意識に落ちます。

次にテーマを変えて、打ち方は気にせず、
ボールを入れることに意識を向けたら、
打ち方はすでにできているのだから、結果が改まり安定性が高まります。

またテーマを変えて、次に攻撃的に打つ練習をするときには、
もちろんボールがコートに入りにくくなり、
結果が一時的に安定しにくくはなりますが、
それを気にせず攻撃的に打つ意識を高めて繰り返すと、
今度は攻撃的に打ちながら、ボールが入るようになってきます。

日によってテーマは変えて構いませんが、
全部を同時にまかなおうとはしないこと。

テーマはひとつに絞り込み、
ほかはあえて手薄感を認めましょう。
全部を同時にやろうとすると、
全部が中途半端になって、結局は上手くいかないからです。

皆さんも、あえて手薄感を認める考え方を、
取り入れてみてはいかがでしょうか。
遠回りのように思えて練習効率が上がるから、
結果的に上達の近道になると思います。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広

さあ、このSpeaksを読んだらさっそく練習しましょう!!レッスンへGO!!
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