Speaks vol.82  <<テニスを通じて脳を活性化!>>

フリーの乱打なら、100球打っても疲れないのに、
「20往復続ける」という条件を与えると、ドッと疲れるという人がいます。
これは一体、なぜでしょうか?

一言でいうと、「普段は使っていない気を使ってプレーしたから」というのがその理由。

ボールを打ち返すときに、ただ何となく打つのではなく、
向こう側のコートを意識しながら、相手が捕りやすいように気を使って打つと、
労力のかかり方がまったく違ってくるのです。

15往復をすぎて17、18往復目に差し掛かり始めると、
「ミスしてはいけない!」というプレッシャーも高まってくるでしょう。
これが、条件を与えると、ドッと疲れることの正体。

また、そうやって気を使ってプレーするには、
「しっかり見る」「視野を広げる」ということも、とても大切になります。
ラリーを続けるには、飛んでくるボールのスピードや軌道の変化の仕方に始まり、
相手のポジションやコートの位置関係に至るまで、
「見る」機能をフル稼働しなければなりません。

この「見る」というのにも、実は案外多くの労力を使うのです。
だから、練習ではすごく元気で何百球打っても疲れないという人が、
試合になるとすぐに疲れる、ヘタをすると普段はめったにないのに、
足がつったりするアクシデントに見舞われたりすることも起こり得ます。

これは、練習では好き勝手プレーし、打つことだけに労力を使えていたのに、
試合になると気を使う、ボールの他にも相手やコートをしっかり見るなど、
打つこと以外にも労力を配分せざるを得なくなるため。
そうすると、「試合になると、いつも通りに打てない」というよくある悩みに行き着くのです。

だけど逆に言えば、普段の練習から気を使い、
しっかりと見ることにも労力を割いて取り組むようにすれば、
例えば100球打たなくても20往復するだけでも、
かなり実戦的なトレーニングを積むことができるというふうに言えるのです。

特に、「見る」ということへの労力配分を高めてみてください。
あるテレビ番組の企画で、速読をすると視覚的な刺激により脳が活性化し、
スポーツパフォーマンスが向上するという検証をしていましたが、
テニスにも同じことが言えます。
適切に、ボールや相手、相手コートを含めて広い視野で全体を見られるようになると、

脳が活性化する素晴らしい効果が期待できるはず。

今年は勝ち負けのみならず、
「テニスを通じた脳の活性化」にも取り組んでみませんか?
仕事や生活に応用できる新たな発見が、たくさんあるに違いありません。
そして脳が活性化すると、結果的に試合にも、勝てるようにもなってきます!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広