Speaks vol.83  <<視野の広さは思考の広さに通じる>>

よく、色んなものの考え方ができない人のことを
「視野が狭い」というふうに言いますが、
視野が狭いとは、思考の幅が狭いのと同様に、
実際に目に映る視野の領域も、狭くなっているというふうに考えられます。

言い方を換えると、テニスでボールにしかフォーカスできない人は、
前方に広がるコートや、存在する相手にまで思考が及ばないから、
でき得ることが限られてしまいます。

スペインドリルというのがあって、自分のポジションに応じて
打つボールの方向性を定めて行う球出し練習があるのですが、
視野が狭く、相手コートの存在を感じられない人は、
正確にコントロールできなかったり、
定められたコースに配球できなかったりしがち。

視野を広く保てる人は、ポジションに応じたコース配球にも思考が及ぶため、
上手にドリルをこなせるということが実際にあるのです。

前回お伝えしたとおり「見る」ということは、
脳の活性化にも影響するため、
意識的にしっかり見て、視野を広くすることは、
スポーツパフォーマンス全体のレベルアップにも通じます。

例えば両手の人差し指を、顔の左右に立てて、右と左を交互に見る。
あるいは人差し指を顔の前に前後に並べて、
手前と奥とを交互に見るようなトレーニングはオススメ。

試合などで緊張すると、ボールが見えづらくなったり、
視野が狭くなったりしがちですが、
目も筋肉の収縮により動きがコントロールされているので、
トレーニングを行っておくことで、そのような不調も解消されます。

また、試合のシチュエーションを頭の中で想定する
ビジュアライゼーションも、「見る」に含めてよいでしょう。
例えば相手がネットに詰めてきたらどうするかを、
事前に頭の中で「見ておく」ようにします。

すると、実際にそういうシーンに遭遇したときにも、
すぐに応じることのできる柔軟な思考を
働かせることができるというわけです。

ところが見ていないと、「どうしよう!」とパニックになり、
「とにかく強打し返す!」しかないみたいな、
視野の狭い思考パターンで応じてしまいがち。

視野を広げれば、柔軟な発想ができますし、思考も広がりをみせます。
それこそ、幅広い物の見方ができるようになるのです。
テニスに限らず、ほかのスポーツや日常生活でも、
意識してみると、色んな発見があるに違いありません!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広