Speaks vol.79  <<ボールコントロールの精度を上げるには>>

前回は、フェデラーに大逆転勝利するきっかけとなった
ジョコビッチのリターンエースを振り返り、
USオープン準決勝のエピソードについてご紹介しました。

今回は、そのリターン他、テニスにおける
ボールコントロールの精度を上げるアイデアを取り上げます。

ジョコビッチはフェデラーのワイドに切れるスライスサーブを、
飛びつきざまにフォアで打ち返し、リターンエースを決めました。
このリターンエース、狙っていたのでしょうか?
ここを参考にすることで、レベルアップがかなうかもしれません。

正解は狙っていた(はずです)。
「ワイドに来たら、こう打とう」
「センターにきたら、こう返そう」という読みがあり、
実際にワイドに来たから、その読みを実行に移せたと説明できます。

これはメンタルリハーサルといって、
これから起こる状況のことを事前に頭の中でシュミレーションしておき、
実行時の成功率を高めるスキルです。

初中級者は、リハーサルがなくてぶっつけ本番。
だからボールコントロールが難しくなるのは無理もありません。
予期せぬことには、対応しにくい。当たり前ですよね。
予期しておいて、張っていた方に飛んできたらシュミレーション通りに実行するのが、
確率を高める方法論、つまりボールコントロールの精度を上げるコツです。

だけど、この時ひとつ問題があります。
それは、「予期せぬ方に飛んできたらどうするか」という話です。

単純に言うと、「フォアを張っていたのに、バックに飛んできた場合の対応はどうするか?」ということ。
この時に、初中級者は、それでも何とかベストのリターンを打とうと頑張りますが、
これがよくありません。
うまい対応法は、張っていたフォアに来たら「攻撃的に打とう」、
たけど逆のバックに来たら「安全に返そう」と、区別しておくこと。

つまり、バックにきたらスライスでも何でもいいから、
ディフェンスで1本しのぐというふうに、落ち着いてプレーすることです。
読みが外れたのに、ベストの打ち方を目指して攻撃的なリターンを打つ必要はない。
外れたら外れた時にふさわしい対応をすることが大切です。

読んでいた方に飛んできたら、メンタルリハーサル通りに作戦を実行する。
だけど逆を突かれたら何でもかんでも頑張ってベストのボールを返そうとしないこと。
こういう使い分けができるようになると、
自分の意志でコントロールする感覚が出てくるし、
プレーのレベルも上がるに違いありません。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広