Speaks vol.77 <<好き嫌いにとらわれない>>
前回は、望む結果を手に入れられるように変化するためには、
プロセスが大事だという話をしました。
「テニスが上達したい」「試合で勝ちたい」という結果にばかり
目を向ける人が多いけれど、
どんな結果の前にも必ずプロセスがあり、
プロセスを意識することで、結果が変わり始めるという内容でした。
そうやって、自分を進化・成長するように変化させていくことが大切。
だけど実際問題として、そもそも人は、なかなか変われません。
なぜなら人は、今までの慣れ親しんだやり方、
慣れ親しんだ自分に、とてつもない安心感があり、
新しいトライには、大きな不安を覚えるからです。
自分を変えることには、それがたとえ良い方向への変化だったとしても、
精神的な苦痛が伴う。
これが、自分が変化できない最大の障壁といってもいいかもしれません。
上達したいのに、新しい環境に身を置くのは緊張するから、
いつも同じ仲間とばかり練習する。
結果を出したいのに、試合に出るのは不安だから、
いつも同じ仲間とばかりゲームしている。
そういう「現状を変えたいのに、現状のままでいたい」というケースは、
大いなる矛盾であるにもかかわらず、往々にしてよくあるものです。
そういう時には、好みの問題にとらわれない姿勢がとても重要です。
上達したいのであれば、好き嫌いは別にして、いろんな人とプレーし、
いろんなタイプ、いろんなリズム、いろんなタイミングに適応しておくことが大切。
テニスの試合で勝ちたいのであれば、
ハードヒッターでも、強打を控えるべき時もある。
その人にとって、緩く打ち続けるようなプレースタイルは本意ではないかもしれない
けれど、
それは好みの問題で、強打よりもつなぎの方がミスせず点を取れるのであれば、
そちらを選択すべき。
好みによらず、目的に応じたプロセスを遂行しようとするのが、
勝つ人の姿勢です。
負ける人というのは、合理性や有利性はさておき、
好みの問題で行動してしまっているケースが多いと言えます。
逆に言えば、今までのやり方で思うような結果を出せていなかったのであれば、
好みではない方を積極的に選択していく方が、得策かもしれないということ。
「好きか嫌いか」ではなく、「やるべきか否か」で判断をくだせば、
もっと楽に結果を出せるようになるかもしれません。
そして結果が出始めると、やっているうちに、
当初は嫌と思っていたことも案外好きになってくるものです。
好きか嫌いかではなく、やるべきか否かで判断し、プロセスを遂行していく。
これが、自分を変えて進化・成長していくためにはとても大切です。
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広