Speaks vol.76  <<自分を変える>>

「多くの人が、自分を変えないで、
   よりよい成果を期待し、そして挫折している」

今回言いたいことは、これがすべてです。
「テニスが上達しない」「試合で勝ちたい」と言っている割には、
自分を変化させずに、1年前の自分から何ら変わらないでいる……。
おかしいと思いませんか?

結局ほとんどの人は、変わりたいのに、
自分を変えません。変えられません。
なぜでしょうか?

それは、ほとんどの人が「上達したい」「勝ちたい」という結果にしか目が向かず、
プロセスをすっ飛ばして、明確な目的意識を持たないでいるからです。

例えば、テニスでボールを打つ時に、ハードヒットするとする。
導かれる結果が、
(1)ノータッチエースだった
(2)バックアウトした
(3)ネットミスした
上記の3つだった場合、(1)ならいいけど、
(2)、(3)だと不機嫌になる、という人は少なくありません。
入ったか、入らなかったかの結果にしか目が向いていないと、そうなります。

だけどそもそものボールを打つ目的意識は何だったかというと、
「ハードヒットすること」でした。
リスクを覚悟でハードヒットした結果が、(2)、(3)だったとしたら、
「惜しかったなあ」とはなるものの、不機嫌にはならない、ということにお気づきで
しょうか?
不機嫌になった時点で、その人の進化・成長は止まります。
なぜなら結果にとらわれていて、プロセスはまったく意識されていないからです。

どんな結果の前にも、必ずプロセスがある、ということを忘れてはいけません。
そしてプロセスを遂行するには、必ず目的意識をしっかりと定める必要があるのです。

目的意識の定まらない人というのは、
文形でいえば「S(主語) V(動詞) O(目的語)」の、Oがない状態。
「私(主語)、打つ(動詞)」と言っているようなもので、
つまり、「何を(目的語)」が抜け落ちています。

その「何を(目的語)」のために、どのように、どうやって、
どんな回転をかけて、どんなスピードで……というふうに
ひとつずつ明確にしていくことが、結果を出すためのプロセスを踏むという意味です。

結果を変えたいからといって、いきなり結果が変わるわけではありません。
結果を変えるには、必ずプロセスを変える必要があるのです。
逆に言えば、プロセスを変えれば、結果は必ず変わります。

「上達したい」「試合で勝ちたい」という結果を手に入れたい気持ちは、よくわかる。
ならば、プロセスを変えていきましょう。
同じプロセスをたどり続けて成果が出ないと挫折し続けるよりも、
違うプロセスをたどり始めて自分が変化するように働きかける。
これこそ、進化・成長のきっかけとなるに違いありません。

次回は、プロセス遂行にあたっての
具体的な取り組み方について、ご紹介します。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広