Speaks vol.71  <<グレーゾーンでプレーする>>

練習というのは、成功したか、失敗したか、
思いどおりに打てたか、打てなかったか、
一つひとつが基本的に、白黒つけやすい環境であると言えます。

だから、喜んだり落ち込んだりしやすく、
感情の発露が単純です。

だけど、そうはいかないのが、試合です。
特にテニスは、勝つために全ポイントを取る必要はないスポーツだから、
成功することも、失敗することも、
思いどおりに打てることも、打てないことも、いろいろあって、
白と黒とが曖昧に入り混じり、感情のあやも複雑になりがち。

もちろん、最終的に勝ったか負けたかの白黒はつきますが、
たとえ自分が勝っても、納得いく勝ち方ができずにモヤモヤとした
グレーの部分が残っていたりもすることも、よくあるものです。
だけどこのグレーの部分を否定したりせずに、
受け入れられる人は強くなりやすいというのが、今回の話。

試合というのは、勝敗が決まるまでは白黒つけられない
不確定要素のグレーだらけです。
人は基本的には、良いにしろ悪いにしろ分かりやすいから、
白黒つけたがるのが性分。
だけど、白黒つけられない渦中に身を置く状況であれば、
グレーであることに、否定的であってはいけません。

グレーの中で、何でもかんでも白黒つけようとするのには、無理があります。
だったら逆に、グレーのままでいいことを認めてやればいい。
グレーを認めるとは、相手や状況に、
柔軟に応じることのできる対応力があるということだからです。

実はこれ、テニスの試合に限ったことではなく、
その他のスポーツや仕事でも、まったく同じ。
もっと言えば、人生全部がグレーです。

白黒つけるというのは、
自分の中でうまくいったかどうかの判断を下す、言わば個人技。
だから、自己満足する分には良いですが、独りよがりになりがちです。

一方のグレーは、相手とのやり取りの中で対応を変えられる対人プレー。
相手の変化に応じて、黒に近い白から、
白に近い黒まで、いろんなグラデーションに色を変えられます。
いろんな相手や状況に合わせられるから、
必然的にいろんな人を相手にしても、
いろんな状況に遭遇しても、当然うまくやっていけるわけです。

白黒つかないグレーの状態を、否定すべきではありません。
むしろ、積極的に受け入れましょう。
些細なことにこだわって完璧を期するよりも、
ファジーな部分を残しておいた方が、対応力や柔軟性は飛躍的に高まります。

白黒つけないと気持ちが悪いという人は、
些細なことにこだわりすぎている傾向が多分にあります(笑)。
完璧を求める必要はないし、曖昧なものは曖昧なままでいい。
それを嫌がったり、拒んだりしないことです。

常日頃から、白黒つかないグレーの要素を受け入れることで、
テニスから仕事、人間関係に至るまで、
さまざまな物事がうまく回り始めます!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広