Speaks vol.68  <<限界値を上げる具体的方法>>

前回は、自己防衛本能についてご説明しました。

人間は、自分自身を守るために10ある限界レベルのうち、
5とか6で「しんどい」「もう無理だ」といって
追い込むのをやめてしまう働きのこと。
これは、命を守るための本能なので、自然な反応なのですが、
トップアスリートは8とか9レベルまで自分を追い込めるという話でした。

今回は、自己防衛本能の限界値を上げるための
具体的な方法についてご説明します。
「とにかく頑張る」では、なかなか上がりませんよ。
みんな自分なりに頑張ってそのレベルなのですから。

では、自己防衛本能の限界値を上げるための具体的方法論とは何か?
それは、「受け入れる」ということです。

例えばテニスの試合で、ボロ負けしたとする。
そこで「自分はこれ以上うまくなれない」「才能がないんだ」といってしまうと、
すぐに限界を迎えてしまいます。

だけど、負けを受け入れてさらに努力し、前進することで、
限界値は上がります。
もちろん、前進するのは大変。
嫌な思いも受け入れなければなりません。
だけど、受け入れないと、進めないのです。

「嫌な思いをするから嫌だ」といって受け入れないでいる人は、
自分を防衛している証拠。
受け入れずにいると、自分の限界値はどんどん下がってしまうことになるのです。

例えばテニスの試合に初めて出た人に
「ビビってたでしょ」というと、「いや、ビビリはしなかたった」と返ってくることがあります。

でも、はたから見ていると実際にはぎこちないのがみえみえで、
練習どおりのショットが全然出ない。
やたらウロウロしたりキョロキョロしたりして、明らかに挙動不審者(笑)
それなのに「ビビリはしなかった」というのは、
ビビッた自分を受け入れられていないことになります。

実際にはビビリを受け入れることによって
自分を守ろうとするリミッターが外れ、限界値が上がります。
次への修正ができ、課題も見つかります。

自己防衛本能は、本能だから、とにかく頑張るという姿勢だけでは、
8とか9のレベルにはなかなか引き上げられません。
ぜひ、「受け入れる」ということを意識してみてください。
自己防衛本能のリミッターがパチンと外れ、
さらなる高みに行けるに違いありません!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広