Speaks vol.67 <<自己防衛本能について考える>>
昨年の全豪オープン準決勝、
ラファエル・ナダルは、フェルナンド・ベルダスコを相手に、
5時間14分に及ぶ全豪史上最長となった激戦を制しました。
だけど、決勝がまだ残っている。
相手はあの、ロジャー・フェデラー。
消耗し切ったナダルは、決勝戦が始まる3時間前まで
「もう無理」「限界だ」といってあきらめかけていたといいます。
でも、結果はナダルがフェデラーを破って優勝。
この勝利の陰には、コーチであり伯父である
トニー・ナダルの助言があったといいます。
トニーいわく、「人間、無理だというのは簡単。
だけど限界を感じて無理だというよりも、
もう少し頑張れるのが人間だ」とのこと。
人間には、命を守るための自己防衛本能というのが備わっています。
そのレベルを数字で示すと、0から10まであるとして、
レベル10が本当の限界=死です。
そこまで行ってしまわないように、無理だ、疲れた、限界だといって
自分を追い込まないように防衛する本能のこと。
これが、一般の人ならメチャメチャ頑張って、レベル5。
レベル6まで行くとすごく頑張る人で、
トップアスリートはレベル8~9まで自分を追い込めるといいます。
ナダルはベルダスコ戦で8とか9まで追い込んだ。
だけど、10まで行っていないと奮起し、勝利したのです。
ランニングを例に取ると、
「しんどいなー」「やめようかなー」といって
限界を定めてしまうのは、まず頭です。
でも体は、実際にはまだまだ走れる状態で、
トニー・ナダルに言わせると
「どんなに疲れたといっても、拳銃を突きつけられて
ほら走れと脅されたら、人間まだまだ走れるだろう」ということなのです!
頭で「無理だ」「限界だ」といっても、
それは自己防衛本能による錯覚。
体は5とか6とかのレベルで、本当はまだまだ余裕があるのです。
何か成果を上げたいなら、この自己防衛本能の働きを理解した上で、
限界値を上げてやるという方法がオススメ。
そのためにはどうすればいいかというと、
「やりがいのあるゴールを決める」というのがコツです。
人間は、ゴールを決めないことには頑張れません。
「いいから、ずっと走れ」と言われると、
「いつまで走るの?」「嫌だ」「疲れた」といって
すぐにストップがかかりやすくなります。
でもゴールを決めると、しかも簡単すぎず、
挑戦意欲をかき立てるやりがいのあるゴールを定めると、
限界値を高めるパワーが自然と引き出されるのです。
たとえば「100キロ走る」ややハードなゴールを目標にしてみる。
すると、確かに大変そうだけど、そのやりががいが自己防衛本能のストッパーを外し、
はるかに自分を追い込みやすくなるということです。
一生懸命頑張っているあなたも、
本能では自分を守ろうとしています。
より高みを目指すなら、どうぞ今回の話を思い出してください。
あなたの本当の限界は、まだまだそんなものではありません。
もっともっと上を目指せます!
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広