Speaks vol.66  <<「あれ、ちょっと待てよ」のススメ>>

現代人は忙しく日々を送っているためか、
速く進むこと、先に進むことを急いているように思えます。

例えば試合で相手にリードされたら、
速く挽回しよう、速くポイントを進めようとしがちです。

でも、闇雲に突き進んでみたところで、流れや不利な形勢を変えられるわけではありません。
むしろ相手をペースに乗せてしまい、リードを広げられるのがオチでしょう。

リードされている時には、「なぜリードされているのか」を考えてみると良いのです。
そのためには、先を急ぐのではなく、「あれ、ちょっと待てよ」と冷静になり、
その場に立ち止まって考えてみることがすごく重要。

「リードされているのは、自分がすぐにミスをしているからではないか?」
「プレーが消極的になりすぎているからではないか?」
「攻撃的にプレーすれば、相手が先にミスするかもしれない」
そうやって立ち止まり、状況を客観視することが大切です。

あるいは前回お伝えした「人のせいにする」ような態度を取っていないかどうか。
「相手のせいでプレーがうまくいかない」と考えてしまうと、事実を正しく認識できません。

いえ、人ばかりではない。
「汗で手がすべる」といってグリップのせいにしていないか?
「飛びすぎる」といって風のせいにしていないか?
「まぶしい」といって太陽のせいにしていないか?
そういう「何かのせい」にする癖のある人は、状況を客観視できないために、
対策を講じるためのアイデアがひらめきません。

先を急いで突き進もうとしてしまう人は、
その場その場の対応に、感情的になりがちです。
だからミスしたらすぐに「ダメだー」と声を出したり、
顔を背けたり、うなだれたりする。

そういう人は、ミスをしても絶対に声を出さない、
顔を背けない、うなだれない、
つまり何事もなかったかのように装う練習をしてみると良いでしょう。

これをすると、中には耐え切れずに泣き出す人もいるほどですが、
続けていれば感情に流されにくくなり、立ち止まれるようになります。
「あれ、ちょっと待てよ」ができるようになるということ。
客観的な状況判断に基づき、より良い選択と決断ができるようになります!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広