Speaks vol.64  <<ゾーンについての正しい理解>>

前回、集中するためには準備が大切だという話をしました。

だけど、準備をして集中状態に入ったからといって、
あなたが突如、スーパープレーヤーになれるわけではありません(笑)

この点をしっかりと理解しておかないと、
「おかしいな、ミスするのは集中していないからだ」
「まだまだ集中力が足りないんだ」といって意識が分散し、
逆に集中力が散漫になってしまいます。
深く集中した時の状態を「ゾーン」といいますが、
ゾーンに入っても、失敗はするし、ミスも犯します。
テニスでは、100%の成功率はあり得ません。
相手の素晴らしいコーナーを削る弾丸サーブ、
返せないものは返せないのです。

そこで「返せないのはなぜだろう?」と結果に目がいってしまうと、
ゾーンの状態はパッと解けてしまいます。

ゾーンの状態とは端的に言うと、「今に集中」。
つまり結果ではなく、プロセス志向。
自分が今、やるべきことをやれば
力量に見合った結果があとでついてくるというのが、
ゾーンに対する適切な理解です。

ところが「ゾーンに入れば力量以上のプレーができる!」などと、
結果を先に期待してしまうと、ゾーン状態はパッと解けてしまうわけですね。

非常に微妙な話ではありますが、「順番」が大事。
今やるべきことをやれば、あとで結果はついてくるのですが、
先に結果を期待すると、今やるべきことができなくなるということ。

よく、グランドスラムの中継などで、選手が次のように話をします。
「次は簡単に勝てる相手じゃない」
「とてもデンジャラスなプレーヤーだ」と。

これは、簡単に勝とうとは思っていない、
すなわち結果にあえてこだわらないように自分を仕向けている
メンタルコントロールになっているのです。

もちろん人間ですから、本音は「勝ちたい!」と思っている。
皆さんが、相手のダブルフォールトを期待する気持ちもよくわかる(笑)
だけど、それで勝ったところで、
競い合うプロセスを経なければ、常勝プレーヤーにはなれません。

ラクに勝った方が本音はいいけど、
いずれラクじゃない試合に遭遇する機会が必ずやってきます。
そういう時に結果を気にしてしまうと、
「もう勝てそうにない」「これは負けるな」と、すぐにもろく崩れてしまいます。

そういうシーンでも、競い合うプロセス重視の姿勢を保てることが、
常勝プレーヤーになるための条件なのです。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広