Speaks vol.63  <<集中するには準備が大切>>

集中することは、テニスではとても大切です。
だけど「試合に集中する」といっても、
何をやっていいのかわからないというのが、実際ではないでしょうか。

試合に集中するには、その前の準備の段階から、
意図的な働きかけが実は必要なのです。

例えばグランドスラムの中継などで、
選手はよくこんなことを話します。
「練習では、強く打つことを意識して繰り返し行った」
「アプローチからネットを取る練習を繰り返し行った」など。

そうやって、試合に則して具体的な準備を意図的に繰り返すことが、
試合で集中力を発揮するためのポイントなのです。

もっと前の段階でいえば、道具の準備をはじめ、
会場へのアクセス方法を調べたり、体調を整えたりすることなど、
試合に対してよりたくさんの気を払うと、
意識が試合に強く向けられ、本番で集中力が発揮されるようになります。
一つひとつの準備が、試合に向けた集中の儀式になるということですね。

だから、例えば試合のエントリーを友だちに任せるというのはNG。
自分で準備をしないことには、試合への集中力が高まらないからです。

人間は、「具体的にこうしよう」と決めたこと(準備したこと)を
やっている時には、不安になりません。
逆に、何をしようか決めていない(準備していない)時に、
強い不安感を覚えます。

準備がないと、不安になる。
不安になると、集中できない。
日によって集中できたりできなかったりする原因は、
そういう準備の出来不出来による心の波があってのことなのです。

また、試合では些細なことでメンタルが動揺します。
日常だと、どうということのない指のささくれが、
試合になるとグリップに当たって妙に気になる。
リストバンドを忘れてきて、汗がふけないことに不安になる。
あるいは普段なら我慢できるのに、やたらと便意が強くなる(笑)

これらを予測するのが、準備です。
準備が万端であれば、不安は少なくなるため、
自然と心は集中しやすくなるでしょう。

「集中、集中」と唱えても、集中できるものではありません。
だけど準備さえしっかりとしていれば、
人間は自然と集中できてしまうものなのです。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広