Speaks vol.60 <<相手に意識を向ける>>
自分の技術、体力を高めれば試合に勝てると思っていませんか?
実はそれだけでは、試合には勝てません。
きっとご存じだと思いますが、
試合では技術も体力もずっと下なのに、
そんな相手にコロッと負けてしまうということがよくあります。
それは、実は「意識の向け方」に違いがあるのです。
自分の技術、体力を高めれば勝てると思っている人は、
ほぼ「自分だけ」に意識が向いています。
自分がどう打つか、自分の今日の調子はどうなのか、
そういうことばかりに気が向いているのです。
でも、実際に試合で勝ってしまう人というのは、意識のベクトルが真逆なんですね。
自分の技術、体力はこの程度しかないけれど、
目の前の相手に影響力を与えるにはどうすればいいかを考えている。
つまり、「相手に意識がフォーカスされている」ということです。
たとえば仕事でプレゼンをする。
意識が自分に向く人は、完璧な資料を作ろうとするでしょう。
どうやったらレイアウトをきれいに見せられるか、
グラフの配色はどうするか、凝ったテキストにするにはどうするかということを意識し、
資料作りに完璧を期します。
でもそれが、「人に伝える」という目的をおろそかにして
資料を美しく仕上げることにとらわれては、本末転倒。
逆に、「人に伝える」目的を踏まえてシンプルにわかりやすく仕上げ、
あとは当日話す内容が相手によく伝わるように話を整理するなどしたほうが、
プレゼンは成功するのではないでしょうか?
要するに、「他人との関係性を無視して自分のことだけ考えていては、
何事もうまくはいかない」ということです。
テニスで言えば、自分の調子を考えるのではなく、相手の調子を考える。
もっと言えば、自分の調子は度外視しても、
相手に影響を与えられれば、それでいいわけです。
次の4つの意識レベルを確認しておきましょう。
1.自分は、自分を意識している。
2.自分は、事実を意識している。
3.自分は、相手を意識している。
4.自分は、今を意識している。
テニスで言えば、
1.は、自分の調子だけを意識している。
2.は、スコアを意識している。
3.は、対戦相手まで意識している。
4.は、風や太陽などの刻々と変わる状況まで意識している。
たいていのプレーヤーは、1.か2.どまり。
3.以降ができている人が勝てる人なのですが、
このレベルの人は、実はとても少ないのです。
3.の人は、自分がミスしたからといって感情的になったりしません。
相手に意識をフォーカスしているから、
自分が落ち込んだりしている暇すらないのです!
ちなみにそういう人は、相手や周りのことを気遣える人だから、
不思議と練習にもよく誘ってもらえたりして、ますます強くなる。
自分のことオンリーの人は、練習にも誘ってもらえないから、ますます取り残されます。
この違いは、テニスライフを左右する大きな問題です。
あなたはどちらでしょうか?
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広