Speaks vol.48  <<同じボールは2球来ない>>

人間が変わるためには、

そのためには、結果を考えずに「まずやる」ことが大切だと、前回お伝えしました。

やらなきゃ始まらない。
そのためには、自分の尺度だけで見る癖をやめ、
新しい考え方、今までとは違う方法を積極的に取り入れていくことが、
結果をあれこれ心配するよりも優先されるというお話をしました。

毎日が同じワークの繰り返しだと、確かにラクだけど、
自分が進化、変化、成長するには、自分の尺度外の方法論を試してみるほかありません。
「毎日が違うと思える人が成功する」のです。

今回はこの考え方をテニスに置き換えてみましょう。
現状を打破するきっかけを、つかめるかもしれません!

うまくプレーするには、
「状況はいつも違う」と考えられるかどうかです。
「ここに来たら、こういうふうに打ち返す」とか、
そういうステレオタイプの考え方にこだわりすぎると、勝てません。

よく、「試合になると練習のように打てない」
「試合になると普段の実力を出せない」という人がいます。
そういう人は、いつも同じ状況下でテニスができると思っているのです。
でも、実戦ではまったくそんなことはあり得なくて、同じボールは2球来ない。

「毎回違う」という思考を定着させて、
自分の尺度を越えた予期せぬ状況に、対応する必要があるのです。
でも、これってすごく当たり前の話。
安定したプレーを求めすぎる姿勢が、不安定を招きます。

自分の尺度でプレーしようとする人は、理想のテニスを追求しがちです。
「遅いボールをつないで勝ったって、勝ったことにはならない。
自分のいつもの調子で勝てないと、意味がない」と。

そういう人は、考え方が凝り固まっているゆえに、テニスの勝ち方に気づけません。
テニスとは、総ポイントで相手を上回ればほぼ勝てるゲームで、
そのためには、ポイントのやり取りがどのように行われているのかを
知っておく必要があります。

ポイントの70~80%が、お互いのミスにより発生します。
このことが正しく理解できれば、
ミスしないための安全な、遅いボールを使うプレーも必要だとわかります。

この話を「そうか!」と思える人は、すぐに勝てるようになる。
それでも「理想のテニスを追求したい」といって自分の尺度で考えてしまう人は、一生勝てません。

自分が成長し、変わるには、
自分が思ってもみなかったことを、どんどんやっていく必要があります。
そのためには、勝ち負けの結果を考えるのではなくて、
まず、自分が今まで難しいと思ってやってこなかったプレーも、実際にやってみる。
つまり「行動」から入る必要があります。

最後に、行動を起こすための具体的なコツをお伝えします。
それは、「動機は不純でも構わない」と考えてみること。

たとえば試合に勝つためには、ランニングやトレーニングも必要だけれど、
いきなりはツライからなかなか腰が上がらない。
そんなときに、「ランニングすれば痩せるし、体も鍛えられるし、一石二鳥だな」とこじつけてしまえば、
心理的なもっと楽にスタートが切れるに違いありません。

とにかく行動を起こすためのカンフル剤があればいい。
行動を始めてしまいさえすれば、
いやがおうでも、身の回りや自分自身に、変化が起こります。

とにかく、やってみること。
そうすれば人間は、どんどん変わるのです。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広