Speaks vol.45 <<変化させない>>
本番で自分の力を出し切れないというのは、
自分の感情が、状況に応じて変化させられている可能性があります。
パフォーマンスの発揮を考える上では、
状況に影響を受けたり、動揺してしまったりしないほうがよく、
感情の振幅が少ないほど、安定的な実力を出せるようになります。
今回は、このことについて詳しく解説していきましょう。
たとえば、あるサービスゲームで「キープしないと負けるかも」とあせるのは、
心が変化させられてしまっている証拠です。
一方ではまた別のサービスゲームで、「キープしたら勝てるかも」と舞い上がるのも、
やはり同様に変化させられてしまっているのです。
「負けるかも」「勝てるかもしれない」と考えるのは、
状況に心が揺れ動かされた結果であり、あなたが変化させられたということになる。
これでは、最良のパフォーマンスを発揮することはできないのです。
「普通が大事」だと、よく言われます。
普通を貫く、当たり前をやり通すのが案外難しいといわれるのは、
人間は、簡単に変化させられる生き物である証左とも言えるでしょう。
まず、大事な場面で変化させられないためには、
心理的圧迫がかかったシーンでは、
「変化させられそうだ」と、自分の心理状態に敏感になって気づくことが大切です。
何となく緊張して、何となく普段の力が出せず、「おかしい、おかしい」と
堂々巡りをしている人は、少なくありません。
心の状態をモニタリングすることが肝心なのです。
また、自分を信じる、つまり自信を持つことが極めて重要。
もちろん、勝った負けたの結果に依存する自信ではなく、
自分のやっていることに信念を持って取り組む自信です。
自信がないと、何を信じ、よりどころとしたらよいのかを見失って、フラフラします。
ちょっとした圧迫で、心が強烈に揺れ動かされてしまうのです。
だから自信を持つことが大事。
真の実力を発揮するには欠かせない要素です。
端的な例で言えば、大事な場面で「頑張ろう」と意気込む姿勢すら、
普段とは違う態度なので、「変化させられている」とも言えます。
一流選手は試合前に、「ただ自分のプレーをするだけ」「ただベストを尽くすだけ」と言います。
裏を返すと、「ベストを尽くすだけ」とは、普段からベストを尽くす練習をしているから、
感情を変化させられずに本番に臨めるということ。
つまり、パフォーマンスを如何なく発揮できるかどうかは、
普段の練習、もっと言えば日常から始まっているということになるのです。
体が硬直したり、緊張したりするのは、感情によるものです。
つまり、変化させられないように自分の心を安定させれば、
結果的に体にも異変は起きないから、
硬直や緊張を生じさせることなくノビノビとプレーできるようになります。
心を変化させないようにすることが、
真の実力を発揮するためのポイントです!
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広