Speaks vol.36 <<プレッシャーを感じる人は、鈍感?>>
プレッシャーをよく感じる人というのは、敏感なのでしょうか?
いえ、逆に鈍感のようです。
このことを、詳しく説明していきましょう。
プレッシャーというのは、例えば100人の前でプレゼンを行う場合に、
失敗しないかと萎縮する、心理的圧迫感。
あるいは試合当日に勝ちたいと気負う、
負けたくないと追い詰められることによる、不安定な精神状態。
こういったシーンに直面したときに、ドキドキして萎縮し、
本来の力を出せなくなることを、プレッシャーに押しつぶされるなどと言います。
しかし敏感な人は、プレッシャーにつぶされることが、あまりありません。
誰でもその重圧をいくらか感じるのですが、その度合いが低いのです。
なぜなら、敏感な人はそんなシーンに直面したシチュエーションというのを、
普段の生活の中で想定し、感じ取っているものだからです。
テニスの試合を例にしてみましょう。
朝起きて、天気を見て晴れだと分かる。
さぁ試合だといって何も考えずにゲームに臨む人は、鈍感。
試合で想定されることについて、何も感じていません。
一方敏感な人は、気温はどうだろう? 寒いなら寒さ対策が必要だ。
風はどうだろう? 強そうだからプレーにも影響があるな、
などといったように、想定できるさまざまなことを、敏感に感じ取ります。
この差は、実は非常に大きい。
コートでボールを打ち出してから、
「今日は風が強いなぁ」とあとになって気づく人は、予期せぬ事態に戸惑います。
あせって、プレッシャーをより感じてしまうのです。
あらかじめ想定できている人は、動じません。
風上か風下かを考えて、どちらのコートを取るかという
実戦的な具体策にまで、考えが及びます。
太陽がどの方向にあるのかは、とっくに分かっているはず。
それなのにサーブのトスアップをしてから「まぶしい!」と気づく人は、鈍感。
それを計算に入れて考えられる人は、敏感です。
当然前者は、余裕がないからプレッシャーを感じやすい。
後者は冷静に対処できるから、プレッシャーを感じにくいというわけです。
ここまで読み進めて、あなたは自分が鈍いほうだと、思ったでしょうか?
そうだとしたら、敏感な方。
それでも「自分は鈍くない」と思い込んでいる鈍感な人もいますから(笑)。
鈍いと自覚する人は、常日頃から感度を高めるように努めましょう。
トレーニングしだいで、どんどん鍛えられます。
たとえばレストランに置いてあるウェットペーパーを観察して、
気づいたことを10個挙げる。
「ビニールに入っている」「抗菌と書かれてある」
「ビニールには切れ目がある」「OPENと書かれてある」
「一枚あたり、値段はいくらだろう」
「ビニールを空けたら匂いがするのか?」などと考えてみる。
すると、いろんな視点が持てるようになります。
物事に対する予測もつくから、プレッシャーも受けにくくなるのです。
そもそも、プレッシャーというのは実態のないもの。
ある種の状況下で自分が勝手に作り出している、妄想にすぎません。
だからそれをどう扱うかは、あなたしだい。
日頃から感度を高めておいて、プレッシャーを楽しめるようになりましょう!
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広