Speaks vol.35  <<影響力を考える>>

あなたの行為が相手に対して、
どんな影響力を及ぼしているのかを考えることは、とても重要です。

例えばテニスの試合で、対戦相手がとても強いと感じた場合、
あなたならどうするでしょうか? どう考えるでしょうか?

相手のストロークがとても速くて、その球威に押されてしまいます。
そんな場合、どうしますか?
大抵の人は、パワーボールに対抗して、
何とか強いショットを返球しようとします。

ただしそれは、自分の実力以上のことをやろうとする無謀。
その場ですぐに、あなたのストローク力が上がるはずは、ありません!
まるで突然のスキルアップを願うようなもので、
試合中に、いきなり自分の実力を変化させることなど、
ほとんど不可能に近いと言えるのです。
ミスを犯していては、相手に何の影響力も及ぼすことはできないでしょう。

あなたは今の実力のまま、この状況をどうにかする必要がある。
どうすれば影響力を与えられるかを、考えることが大事です。
そこであなたは、自分のことだけではなくて、
しっかりと相手の方にも目を向けるようにしてください。

「なぜ、相手はパワーボールを打ち込めるのか?」

それはもしかすると、あなたのボールが全部浅いからなのかもしれません。
そうだとすれば、あなたは自分のボールを、
すごく緩くてもいいから深くコントロールしさえすればよい。
相手をコート後方に釘付けにすることが可能。
あなたのショットが影響力を持ち始め、
ガンガン打ち込まれる確率を、劇的に変化させることができるでしょう!

例えば、相手の1stサーブがとても速い場合は、どうでしょう?
すごいエースを決められると、
とてもかなわないとあきらめてしまいそうになります。

でも、冷静に考えてください。
1、2本たまたまエースを取られても、直接的な敗因にはなりません。
あなたはすごく緩くてもよいから、
とにかく相手コートにリターンを返すということを試みてください。

相手は、いい1stを打ったのにエースにならないと、
「サーブが効いていないのか?」と思い、より強く打とうとします。
すると、力み始める。
あなたの緩いリターンが、相手に影響力を与え始めるのです!

相手の1stサーブが速いからといってパニックになるのではなく、
速い1stサーブを入らなくさせる発想ができるかどうかが、
極めて重要だということです。

では次に、この裏返しの話。
試合巧者の相手というのは、あなたは気づいていないかもしれませんが、
あなたにさまざまな影響力を与えようとしてきます。
例えばあなたがサーブを打とうとするときに、チョロチョロと動き回る。
それが気になり、ダブルフォールトしてしまったとしましょう。

そのときあなたは、何を考えるでしょうか?
ダブらないように、次はしっかりとしたスピンサーブを打つ?

でもそれは、突然のスキルアップを期待するものだから、やはりほぼ不可能に近い。
スピンサーブを普段から練習しておくことは必要だけど、
試合のその場で、できることを考えなければなりません。

最も効果的なのは、「相手の影響を受けている自分に気づく」ことです。
「チョロチョロ動く相手が気になっている」と、自分で分かることが大切。
そうすれば、「気にしないようにしよう」と前向きになれます。
冷静に対処できて視野も広がり、いろんな方法を試せるようになります。

最も良くないのは、何も考えずにプレーしてしまうことです。
そうすると、相手の影響力を無意識のうちに受け続けて、
あせり始め、どんどん考え方の幅が狭まり、
「何をしても勝てない」とマイナスの思考に落ち込んでしまいます。

ちょっと考えれば、分かるはず。
相手だって同じ人間なのであり、ミスもするし、
あなたと同じように、緊張もしているのです。
「何をしても勝てない」などということは、絶対にあり得ない。
今の実力のままで相手に勝てる術は、よく考えれば、大抵の場合あるものです。

これはテニスに限った話ではなく、あらゆる対人スポーツ、
あるいはビジネスにおける交渉の場などにも適用可能。

少しでもいいから、
相手に影響力を与えられる可能性を、試してみましょう。
相手の影響力を受けにくい考え方を、してみましょう。
突破口が、見出せるはずです。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広