Speaks vol.140
  <<要約力>>

前回のスピークスは、せっかく上手くプレーできるようになりかけたのに、
しばらくすると後戻りしてしまう人がいるという指摘で締めくくりました。

「私のことだ!」と身に覚えのあった人も、いたのではないでしょうか?
そういう人は、上手くプレーできるようになったばかりのころは、
大切なポイントについて意識できているのに、
時が経つにつれ、意識できなくなるようです。

こういうと、記憶力が悪いのが原因だと捉えられがちですが、そうではありません。
物事をまとめて考える力、すなわち「要約力」が発揮されていないのです。

スポーツラーニングのレッスンでは、
初めにその日で一番重要な「幹」となるテーマについて説明します。

それをいろんなパターンに当てはめて経験を培うわけですが、
やっているうちに頭が疲れてきて一番重要なテーマが、
周辺情報の「枝葉」へとすり替わっていってしまうのです。

いろんなパターンを経験するにせよ、
「要は、骨盤が動けばいいんだ!」
「要は、ラケットがビュンと振れればいいんだ!」などといった具合に、
幹となるポイントを要約しないと、枝葉の全部を覚えようとして大変になる。

すると前回のテーマであった、
ひとつの物事を別の物事へと応用する「変換力」も活用できなくなります。

それが良い・悪いという話ではありません。
しかしグングン上達する人と、停滞する人との違いはここにあります。
両者の違いは、一般的には「運動神経が良い・悪い」という話で片づけられがちですが、
視神経などと違って運動神経という神経は、実在しません。

違いは「要約力」を使えているかどうかの差と言えます。
レッスンの説明を一字一句覚えておこうとするのではなく、
「要はこういうことか!」とまとめられると、
幹となるテーマに意識をフォーカスでき、上達の道から逸れてしまうことがなくなります。

なお、上記を要約すると「上手くいく仕組み」が正しいかどうかであるとも、言い換えられます。
次回はレッスン生の成功事例、
および私のアメリカテニス修行時代のエピソードをもとに、
「上手くいく仕組み」についてスピークスを展開。

これを知れば無駄な努力をせずに済み、
テニスも仕事も勉強も、何でも効率良く生産性が上がるようになります!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広