Speaks vol.138
<<感情に振り回されない>>
先に行われたUSオープンでは、錦織圭はベスト4でした。
観戦していた人の中には、
優勝できなくて残念だったと思う人もいれば、
A・マレーに勝ててよかったと思う人もいるでしょう。
結果に対して人は、さまざまな感情を沸かせます。
錦織自身、マレーに勝てて嬉しかったり、
S・ワウリンカに負けて悔しかったりしたに違いありません。
しかし勝とうが負けようが彼が戦い続けられるのは、確固とした目標があるから。
それは、世界ランキング1位になることであり、
グランドスラムも1度のみならず、2度、3度と制覇することでしょう。
この目標がある限り、一時的な感情は生まれても、
それに振り回されてしまうブレがなくなります。
スポーツ選手というのは、この目標設定が具体的です。
ところが私たちが日常生活を営む過程においては、
具体的な目標と呼べるものが、果たしてあるでしょうか?
例えば「痩せたいな~」とは思っていたとしても具体的な目標がなければ、
ちょっとした体重の増減に対して一喜一憂してしまいがちです。
喜ばしい時は良いとしても、憂いては挫折しかねません。
しかし「5キログラム痩せる!」という具体的な目標があれば、
あとは運動や栄養のコントロールを計画通りに進めるのみ。
たとえ体重が増減したとしてもその数値を確認するだけに留まり、
感情に振り回されない平静な自分を保ちやすくなります。
要は、人間なのだから感情的になるのは仕方がないとしても、
その感情に振り回されないことが大切。
そのための踏みとどまる足場となるのが、具体的で確固たる目標というわけです。
日本には古くから「一年の計は元旦にあり」という訓がありますが、
これは目標を持つことの大切さがよく表現されていると言えます。
とはいえ、目標の立て方というのにも練習が必要で、
自分にとって簡単すぎたり難しすぎたりして思うような結果が出ず、
成功と失敗を繰り返しながらちょうど身の丈に合う目標が見つかります。
挫折したりするのは、「意志」が弱いからではありません。
「やる気」がないからでもありません。
具体的な「目標」がないからです。
身の丈に合う具体的な目標さえ見つかれば、
湧いて出てくる感情にも振り回されることなく、
やる気を保って物事に取り組める活性度の高い生き方が、
自然とできるようになるでしょう。
そしてその生き方を最も手っ取り早く体験しやすいのが、スポーツなのです。
身の丈に合う上達や成績の目標を掲げ、それを叶える計画を遂行する努力は、
仕事や勉強、家事などにも応用可能。
今一度、自分の生活に、人生に、
目標があるかないかを確かめてみてはいかがでしょうか?
「ない」というならば、この機会に目標を定めてみてはいかがでしょうか?
驚くほど感情に振り回されにくくなり、日々が充実し始めるようになります!
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広