Speaks vol.137
  <<デジタルとアナログ>>

デジタル家電から電子書籍に至るまで、
近年のデジタル化には目を見張るものがあります。
それにより、生活が便利になったり、効率が上がったりするメリットは計り知れません。

しかし、そのようなメリットがもてはやされると、
デジタル至上主義のような極端に走る動向が起こり、
対極にあるアナログは全部非効率だといってどんどん切り捨てられるのが世の風潮。
だけど、本当にアナログ的なものを、どんどんなくしてしまってよいのでしょうか?

われわれ人間は、アバターのようなデジタルではなく、
言うまでもなく生身のアナログです。
その人間が係わることに関しては、
やはりアナログの感覚的な部分が残されていないと、
都合が悪いと思うのです。

例えばスイングひとつとっても、
加速度や、作用反作用などの説明を通じてデジタル的に分析したとしても、
それは頭の中で理論的に分かっているだけで、
実際にできないのだとしたら、やはり感覚的な習得が抜け落ちていると言えます。

その感覚的な習得をアシストするために、
アナログを駆使した有名なエピソードがありますね。
元読売ジャイアンツ監督の長嶋茂雄氏は、
「スッと引いてバンと打つ」とカタカナ擬音を交えてアナログ的に感覚を伝えたところ、
アドバイスを受けたバッターはみるみる打てるようになったと言います。

また、ハンマー投げの選手である室伏広治氏はかつて、
ビデオでフォームをチェックするデジタル的な練習に励んでいましたが、
ある時を境に自分の中の感覚に目を向けて、アナログ的な度合いを高めたと言います。

自分を客観視するビジュアライゼーションのデジタルばかりにとらわれずに、
自分の中の感覚に目を向けるアナログ的なアプローチを通じ、
「鉄人」へと進化しました。

要するに度合いはどうあれ、
デジタルとアナログの両方が必要という結論に帰着します。

今、便利なデジタルをやめてゼロにしたら、
生活が激変してとても困るのではないでしょうか?
それと同じように、すごい勢いでどんどん切り捨てられているアナログもゼロになれば、
相当困る事態も招くはずなのです。

そういうアナログの感覚的なところへ目を向けるためにも、
スポーツをやってみませんかというご提案。

スイングについてはもちろんですが、
対戦相手との駆け引きや、間合い、ゲームの流れなど、
デジタル化できないアナログ的な感覚を呼び覚ますことができます。

そこからの学びはきっと、
仕事や家事、勉強などの日常生活にも活かされるはずです!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広