Speaks vol.01  <<デビスカップ・ファイナル>>

昨年12月に行われたデビスカップ・ファイナルのアメリカVSスペイン戦について
お話ししたいと思います。

この試合の解説をされていた神和住純デビスカップ日本チーム監督が話していましたが、
テニスがプロ化される以前までは、どの選手もウィンブルドンとデビスカップを
目指していたとのこと。
テニスがプロ化され、選手が皆ツアーをまわるようになり、個人主義が進む今でも、
チームのために自分の力を最大限発揮しようとしている選手の姿は、
昔も今も変わらないとのことでした。
プロ選手にとっても自国の代表としてプレーするため、誇りであると同時に、
プレッシャーのかかる試合であることは確かです。

このファイナルの試合の中で特に印象的だったのが、
アンディ・ロディック(アメリカ)VSラファエル・ナダル(スペイン)戦でした。
ロディックはアメリカNo.1の選手であり、世界No.1になったこともある
アメリカチームの大黒柱です。一方、ナダルはスペインチームのエースの一人である
フェレーロの復調が間に合わず、大抜擢された弱冠17歳の若手ホープです。
この時点での精神状態は、ロディックは絶対勝たなければいけない、一方のナダルは
一発当ててやれ、という対照的な状態にあったと思います。

結果は、1stセットをロディックが先取しましたが、逆転でナダルが勝利しました。
そこで感じたことは、サーフェスにも関係しますが(この時はアンツーカーでした)、
テニスでは、特に長丁場の場合、ベースが大事だということです。
大事なゲームの大事なポイントは、よく見ているとスーパーショットでは決まっていません。
そうした場面では、ミスをした方がゲームを落としているという事実があります。
我々は、このような展開を「何もしない攻撃」と呼んでいます。
打ちじこりという言い方もされますが、簡単に言えば、
セーフティーでアグレッシブなプレーということです。
攻撃をする=リスクが高くなるという矛盾も少しありますが、
セーフティーでアグレッシブというのは、自分の得意なプレーで
強気に攻め続けるということです。

この試合をご覧になった方は、おわかりになると思いますが、
ロディックのスタイルは、ビッグサーブ&ビッグフォアハンドです。
しかし、この試合では1stサーブの確率が悪く、フォアのエースも少ない状況で、
足場の悪いアンツーカーにも関わらずネットラッシュをせざるを得ない状況でした。
しかし、スタイルの変更を余儀なくされる状況でも
相手の実力を認め戦い続けていたところは立派でした。
一方のナダルのスタイルは、スペインドリルでもわかるように、
動いて打って動いて打っての繰返し。この試合でも練習の成果がはっきりと現れ、
ロディックがビッグショットを打とうが、ネットラッシュしようが、
ビハインド・ザ・ボールしてしっかり打つという姿勢を終始崩しませんでした。
結果、自分のスタイルを貫き通したナダルが勝利を収めました。

この試合から学べる事は、
・ロディックの相手を認めて戦い続ける姿勢
・ナダルの自分の力を信じてプレーする姿勢
・自分のスタイルを持つ重要性
最後に
・意外と普通のことが重要である
という事でした。
皆様も、「何もしない攻撃!」してみて下さい。