Speaks vol.96
  <<労力の配分をバランスよく!>>

とにかく頑張ればいい、というほど、テニスは簡単ではありません。
どのように頑張るかが、大切。

労力というのは、自分が費やすエネルギーのことで、
目に見えないから意識するのが難しく、またその扱いをおろそかにしがち。

労力とは、自分の中で感じるものです。
そしてその労力とは、増えず、
一定量の中でやりくりする必要があるという点が、ものすごく重要。

例えばフォアハンドを打つ場合、
「1.フォアだ」と判断し、
「2.フォアの準備をする」
「3.ボールの方に向かう」
「4.どこに打つか狙いを定める」
「5.実際に打つ」
という5項目があります。

フォアハンドを上手く打つ上で、
5つはどれも削れないもので、
自分の持てる労力を「10」とした場合、
いかにエネルギーを振り分けるかがポイント。

だけど、例えば「実際に打つ」に「6」を費やすと、
あとの4項目に「1」ずつしか残りません。
これでは、準備不足や、狙わずに打つ事態を招いてしまうのです。

もちろん、労力を均等配分すればいいというわけでもありません。
練習により能力が高まれば、
少ない労力でも同じパフォーマンスを発揮できるようになるというのが、上達です。

つまり、狙う練習をしっかりこなしておけば、
それほど狙うことに慎重にならなくても済むから、
打つ方にその分の労力を再配分できるようになるということです。

実はこういうことは、誰もが経験していることで、
車の運転などは、初心者の頃は運転するだけで精一杯でしたが、
熟達するとハンドル、アクセル、ブレーキの操作にほとんど労力をかけることなく、
運転しながら会話したりすることだってできるのと同じです。

労力自体の総量は、変わっていません。
だけど練習により少ない労力でできるようにする、
そしてバランスよく再配分し直すというプロセスを繰り返すことで、
確かな上達がかなうのです!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広