Speaks vol.42  <<「ポーズ」は言い訳>>

テニスをプレーしているときに、ボールをネットに引っ掛けた、
アウトさせてしまった、ダブルフォールトしてしまった……。

こんなとき「おかしいなあ」と首をひねったり、
「クソッ!」といって怒ったり、
あるいは練習であれば相手に「スミマセン」といって謝ったりしていませんか?

これらの正体は何かというと、
実はすべて自分自身に言い訳するための「ポーズ」。
「ポーズ」をしている限り、いつまでたっても上達しないし、試合に勝てるようにはなりません。

「ポーズ」を取るということはつまり、
「本当の自分なら、こんなミスはしないはずなのに
(だけど今日はたまたまミスをした)」ということを、
暗に対戦相手や、見ている人にアピールしたいだけなのです。

テニスに限らずどんな分野においても言えることですが、
言い訳しているうちは、人は成長しません。
「ホントはもっとうまくできるはずなのに」という誤った認識が、
プラスに作用することはないのです。

例えばミスしたときに「素振りをする」というのも、一つの「ポーズ」。
「自分はホントは、こんなきれいなスイングができるんだ」というアピールです。

言い訳だから、どうすれば次はうまく打てるかを考える反省もありません。
それに加えて「ポーズ」には、ミスを強化する恐れがあるということを、覚えておいてください。
ミスした時点で、それはすでに過去のこと。
過去の失敗を引きずると、印象が強くなってしっかりとしたミスの体験を、
あなたは自分自身にインプットしかねないということです。

特にスポーツは結果が問われる性質のものだから、
「ポーズ」を示すのではなく、きちんと「結果」を示すのが、何よりも特効薬になります。

ボールをオーバーさせてしまったのであれば、
「次こそは必ず入るはず!」と祈って同じ強打を繰り返すのではなくて、
「次はボールをゆっくり打とう」と心掛けて、確実な結果を出すのが得策。

よく言われることですが、強いプレーヤーは謙虚だし、素直だし、紳士です。
強いプレーヤー=グッドプレーヤー。
虚栄心に由来する「ポーズ」が極めて少ないのが、彼らの共通点です。

ロジャー・フェデラーは、いいショットを打ったあともミスショットを打ったあとも
同じような態度でいて、「ポーズ」がほとんどありません。

強くなったから、「ポーズ」を取らなくなったのではありません。
「ポーズ」を取らないから、強いプレーヤーになれたのです。
「ポーズ」をしているうちは、いつまでたっても強くなれないのです。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広