Speaks vol.41 <<怒るのはやめよう>>
レッスンをしていると、怒り出す生徒さんがいます。
ただしこれは、非常にもったいない。
怒りは、パフォーマンスや練習効率を、著しく低下させるからです。
怒ると、損です。
プラスかマイナスかというと、大体それはマイナス。
いったん怒ってしまったら、それを何とかして沈め、
冷静さを取り戻したとしても、プラスマイナスゼロに戻るのがせいぜい。
労力ばかりかけても、そこに得はないのです。
ところで、怒りの感情はなぜ発生するのでしょうか?
それは、自分は○、コーチが×と、はなから決めつけているから。
その結果、コーチは「違い」を説明しているのに、
生徒は「間違い」を指摘されたと思い込み、
感情の琴線に触れて怒りが発生すると考えられます。
コーチは、今までとは違ったこういう打ち方をすれば、こんな違いが現れます、と説明しています。
その「違い」が「上達」です。
皆さんが、今までとは違った自分に成長するということ。
それなのにある生徒は、「間違いを指摘された!」と憤慨するわけです。
同じアドバイスでも、
ある生徒は「違いを教えてもらった」といって学ぶのに対し、
ある生徒は「自分は間違っているとけなされた」と怒ります。
どう感じたかにより、両者の練習効率が今後、まったく違ってくるのは明らかです。
サービスが入らないといって、悩んでいる人がいました。
周りの仲間に「なぜ、自分のサービスは入らないのか?」と尋ねてみたところ、
「もっとスピードを遅くして、簡単に打てばどうか」という答えが返ってきたそうです。
なるほど、回転をかけて確率をよくするスピンサービスの技術を、
今すぐにマスターできるわけではありません。
それならすぐにできる改善法として、「簡単に打つ」というのは、適切です。
ところがその人は、「簡単に打てとは、妥協しろということですか!」と怒ってしまったそうです…。
スピードを落として打てば、サービスを入れられるようになるから、
今までとは違った成果を手に入れられたはず。
それは妥協ではありません。
妥協とは、普段は打てている確率のよいサービスを、今はあえて打たないこと。
スピードのあるセカンドサービスが打てるのに、わざと打たないことを妥協といいます。
受けたアドバイスに対して、「違い」について考えることを放棄しないでください。
「間違い」ではなく、「違い」に焦点を合わせることが大切です。
皆さんがレッスンに疑問を感じたり、不満を持ったりした場合には、
怒るのではなくて、コーチに質問しましょう。
質問するということは、質問を考えるということ。
視野を広くして物事を考える習慣を身につければ、怒りの感情は現われにくくなります。
練習効率を考える上で、これは素晴らしいことなのです。
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広