Speaks vol.150
  <<分かってる?>>

スイングを指導するにあたって、ラケットを、
「押しちゃダメ」「引いて打って」と伝えます。

生徒の皆さんは「分かってる!」と口を揃えます。
しかし、実際に打たせてみると、
やっぱり押す打ち方になってしまうようです。

「分かってる」という言葉のニュアンスが、微妙なのかもしれません。
頭では引くスイングについて、分かっているのだけれど、
打つ段になると、その分かっている理屈を身体で実行に移せずにいる。

あるいは、実は打ち終わったあとに押していたのだと分かったのであり、
打つ瞬間には、分かっていないのではないかとも疑われます。

この壁をいかに乗り越えるかは、「意識」が関わっています。
何か違う対象、例えば「ボールを返さなきゃ」「コートに入れなきゃ」といった結果へ、
意識が移ろうと、引くスイングを忘れてしまいます。

テニスに限らず、上達は段階を踏むのが効率的と考えるならば、
まずは、ボールは返らなくても良い。
引くスイングを意識したら、空振りするかもしれないけれど、
それでも「引けたらOK」と、思えるかどうかが大切なポイントです。

テニスの難しいところは、「結果オーライ」なところがあって、
押すスイングでもコートに入りさえすれば良いとしてしまいがち。
そのせいで、上達のプロセスが停滞する恐れがあるのです。

確かに、相手コートに返りさえすれば良いのだけれど、
その確率を高めて、なおかつ自分の思っている通りの威力、コントロールを求めるには、
段階を踏む必要があるのです。
「結果オーライ」だけでは済まさないために。

そのためには、差し当たっては結果は気にせず、
相手コートに返らなくてもいいから引くスイングを意識する必要がある。
その段階を踏めば次のプロセスへと通じ、
今度は引くスイングだからこそ確率が上がるようになります。

引くスイングで確率が上がるようになるから、
さらに自分が思う通りの威力とコントロールを求めやすくなるというふうに、
ステップアップしていくのです。

とはいえ、テニスは対戦相手とネットを挟んで、
ポイントを取り合うのが目的のゲームです。
なのに、いつの間にか打ち方にばかり意識が向くと、
手段と目的がすり替わってしまいかねません。

なので、次回は目的を改めて見つめ直し、
そのための手段を的確に探るメンタルタフネスの問いかけなどについて、
ご紹介します。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広

さあ、このSpeaksを読んだらさっそく練習しましょう!!レッスンへGO!!
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