Speaks vol.135
  <<「パフォーマーセルフ」を演じよう>>

スポーツラーニングの中でも試合成績が優れるある生徒さんが、
こんなことを言っていました。

試合を振り返り、「相手がビッグサーバーだからといって、
サーブが速いからイヤだとは思わないようにした」というのです。

これは、後述しますがメンタルタフネス的にいうと、
「パフォーマーセルフ」という非常に重要なスキルです。

「ネットに出て来られるからイヤだ」と思わないように演じる。
「スピンの高く弾んで来るボールがイヤだ」と思わないように演じる。

むしろ、「ネットに出て来たらボレーさせよう!」
「弾んで来たら高い打点から叩き返せるチャンス!」というように、
物事の見方を捉え直すのです。
そうやって対処法が見つかると、1歩前へ進めます。

逆に完全に立ち止まってしまうのが、
「イヤ」「ダメ」「キライ」の3大NGワード。

何をするにしても
「イヤだから」「ダメだから」「キライだから」を理由にすると、
その先にまったく進めなくなってしまいます。

しかしテニスの試合というのは、途中で棄権する以外は、
最後まで進み続けなければなりません。

「ビッグサーバーがイヤだ」と思っても、
相手にお引き取り願うわけにはいかない。
そこでビッグサーブがキライじゃないプレーヤーみたいな言動を、
意図的に取るように心がけます。

相手にネットを取られるのがキライなら、
ネットを取られたらむしろ、
「パスで抜くことに喜びを覚えるプレーヤー」を演じます。

何も、ビッグサーバーがイヤな本当の自分、
ネットを取られるのがキライな本当の自分である
「リアルセルフ」でいなければならない理由はありません。

ハッタリでいいのです。
メンタルタフネスのスキルである「パフォーマーセルフ」を演じる力を培えば、
「イヤ」「ダメ」「キライ」でストップしてしまわずに、先へ進めるようになります。

日常生活にも応用できるでしょう。
例えば「人の話を聞かないタイプ」という相手が苦手な人は少なくないでしょう。
こういうとき「リアルセルフ」のままだと、
「できれば関わりなくない」感情が働いて避けようとしがちですが、
あえて相手にアプローチし、話しかけるように努めてみるとよいのです。

すると、初めはイヤだと思っていた相手の印象が、
実は単なる思い込みだったという場合もあり、
「パフォーマーセルフ」のおかげで先へ進める可能性も開けたりします。

そういう意味では、プロスポーツの世界はシビアです。
野球で「左ピッチャーはイヤだ」といっても、
バッターである限り必ず対峙しなければなりません。

ビジネスの場合も、
「イヤ」「ダメ」「キライ」という理由だけでは済ませられないのですから、
「演じる自分」を活躍させてみてはいかがでしょうか。

スポーツで「パフォーマーセルフ」のスキルを培い、
ご自身のビジネスにも活用してみることをお勧めします。
新たな可能性を見出せるかもしれません!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広