Speaks vol.126
  <<「受け身」でいることの大切さ>>

前回は、「感じる力」について、ご説明しました。
感じる力が備わっていないと、自分の変化に気づけないから、上達のしようがないという話でした。

言い方を換えれば、感じる力が優れているほど、自分の変化に気づける。
そういう人ほど上達するという内容でした。

この「感じる力」というのは、実は「受け身」なのです。
ところが世間一般的には、
「世の中に向けて何かを発信しろ!」
「自分の意見を表現しろ!」という「発信」ばかりがポジティブベースで叫ばれ、反対の「受信」については、あまり多く語られません。

それどころから「受け身」というと、
どこかネガティブにすら捉えられてしまいがちなのではないでしょうか。

しかし、発信する前にまず「受信」という、この順序が大切。
例えば人との会話にしても、相手の話を聞いているようでいて(受信)、
頭の中では次に自分が言いたい内容を用意している(発信)ということは、ないで
しょうか?

そうすると、トンチンカンな受け答えをしてしまいかねません。
相手の話に対して的確なコメントやアドバイスを「発信」するには、まず相手の話を精度高く「受信」できる必要があります。
それによって、質の高いコメントやアドバイスができるようにもなる。

あるいは、「この新商品を全世界に向けて発信!」と乗り出す販売戦力も、その商品が受け入れられるニーズを「受信」してからでないと、売れるものも売れないでしょう。

この人たちが求めている商品が何かを的確に「受信」できれば、確実に売れるはず。
しかし売ることばかりを先に考えていると、そのニーズを「感じる力」が発揮されません。

テニスに置き換えると、「自分はこう打つ!」
「ベースラインからストロークでガンガン打つのが自分らしい!」とばかりに、「発信オンリー」のプレーをしている人が目立ちます。

しかしそれを実現するためには、まず相手のボールが、速いのか遅いのか、深いのか浅いのかなどの情報を「受信」する必要がある。

もっといえば「ストロークでガンガン打つのが自分らしい!」としても、たまたまネットに出たら相手が嫌がる様子を視覚的に「受信」したならば、勝つためにはストロークでガンガンよりも、ネットに出るプレーを選択すべきなのです。

これが「受信」の効果。
つまり「感じる力」のなせる技。

自分が「発信」することばかりを考えてどうにかしようとするのでなく、まずは「受け身」、つまり「受信」状態で、いろんな精度の高い情報をキャッチするように務めてみましょう。
そうして「感じる力」が高まれば、どのような分野であろうと、「発信」のクオリティは必然的に向上するに違いありません!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広