Speaks vol.125
  <<感じる力>>

テニスレッスンを受けた感想について生徒さんに
「プレーはよくなりましたか?」と尋ねると、
「よく分からない」と返ってくることがあります。

自分でよくなったかどうか、分からないというのです。

では100歩譲って、よくなったかどうかはさておき、
「今までと違うかどうかは?」と尋ねると、
それでもやっぱり、「分からない」と言います。

自分の変化が、分からない……。
これではもう、変わりようがありません。

変わっていたとしても、自分の変化が分からないのだから、
上達の確かさなど実感しようもないのです。
その結果、悶々と悩み続けるようにもなる。

今までよりもよくなったかどうか、○か×かについては分からなくても、
単純な違いの比較ならできるはずなのに、
「分からない」と答える人が、一定数いるのです。

でもよくよく詳しく聞いてみると、
「10球のうち、2~3球はよくなっているかなぁ」というように顧みる人もいます。
ということは、「分かっているじゃないですか!」という話なのです。

上達とは、0から10に行くだけではなくて、途中の2や3も、変化であり進化。
0~10の間の1~9をすっ飛ばして、いきなり10に到達する一足飛びのワープなど、
まずあり得なくって、必ず途中を経なければなりません。

このプロセスに着目すると、人は変わるのです。
違いが分かるようになるからです。
そのためには、自分の変化を「感じる力」が大切。

「感じる力」というと、どことなく漠然としていますが、
絵を見て何かを感じる、音楽を聴いて何かを感じるなど、
多かれ少なかれ誰もが持っている能力です。

「感じる力」が開発されると、自分の変化に気づけるから、
よい選択を自然と行えるようになるため、どんどん成長していけるのです。

逆に言えば、練習はしているのに成長できないという人は、
「感じる力」が鈍くなっているために、変化に気づけず、
何を選択すればよいのかが分からなくなっていると疑われる。

肝心なことは、「発信」よりも、まず「受信」。
「受け身」というと後ろ向きに聞こえるかもしれませんが、
「感じる力」は「受信」状態になることで引き出され、
結果的に、効果的な「発信」もできるようになってきます。

「自分の成長が感じられない」という人は、
もしかすると成長はしているのだけれど、
不感症になっていて、気づけていないだけなのかもしれません。
今回のスピークスが、あなたの「感じる力」を取り戻すきっかけとなれば幸い。

次回は「感じる力」によって、
どんなパフォーマンス向上が期待されるかについて具体的に解説してみましょう。
それにより、テニスはもちろん、人との会話も、商品開発も、上手く行くようになります。
ぜひお楽しみに!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広