Speaks vol.123
<<前方への意識>>
スポーツラーニングのレッスンでは、アウトプットのメニューを行います。
ラリーは、打つことと受けるが半々で、1往復。
つまり、打つだけでもなく、受けるだけでもない。
この考え方をベースに「見る」「狙う」「備える」の3つのアクションが取れると、自分の力をアウトプットできるという内容です。
「見る=視野」「狙う=目標」「備える=準備」なわけですが、こうして言葉を置き換えてみると、
すべて「前方への意識」が大切なことが分かります。
テニスでは、「視野」は常に前方へ向けておくことが大切。
特に、広く見ておくことが重要で、周辺視野で相手がいない所を確認して打ちます。
テニスでいう「目標」とは、ボールをどこへ打つかということ。
目標もなく、ただ何となく打つだけでは、狙いは定まりません。
目標をしっかりと前方に据えて打つことが、コントロールの精度を上げるポイントです。
「準備」とは、相手から返ってくるボールに対して備えること。
自分が対応しやすいポジションで構えておく必要があります。
そのためにはやはり、意識は前方へ向けておかなければなりません。
ところがいざ実践してみると、前方への意識がなくなってしまう人がいます。
例えば球出しした直後にコーチが手を振っても、レッスン生がそれにまったく気づかない。
「視野」が非常に狭くなっているのです。
あるいは「目標」を狙っているかと問えば、大抵は「当たり前!」と返ってくるけれど、
手順を踏んでできているかといえば、できていないのです。
目標とは通常、短期、中期、長期があり、的に当てるのが長期目標だとすれば、中期目標では狙いを定めて、短期目標ではフォアハンドで打つと決めるなど、プロセスがあります。
ところがみんな、的に当てる長期目標を眺めているだけで、その途中のプロセスは省いてしまっています。
「準備」は、できていないと実感している人が多いようです。
自分がいいボールを打ったら、ポジションを上げて準備しておかないと、せっかく浅いチャンスボールが返ってきても、その浅いボールにやられてしまいかねません。
あるいは試合に出るにしても、準備せずに「出たとこ勝負」みたいなところはないでしょうか?
例えばこれから迎える夏の試合は、暑さとの戦い。
そんな中でクールにプレーする人もいますが、単に暑さに強い体質なだけではありません。
自分は夏の試合の2~3カ月前から、フリースを着て走り、7月に入ってもその生活を続けています。
そうして準備しておかないと、とてもじゃないけど身体がもたないからです。
あるいは冬は寒くて身体が動かないというのであれば、2時間前に会場入りしてアップします。
これも準備であり、つまるところ先々を見通した「前方への意識」が大事という話。
この意識が定着すると、パフォーマンスは格段にアップします。
次回は、これを日常生活でどのように置き替えていくかということを考えてみましょう。
テニスが日常に活かされ、日常がテニスに活かされる、双方向の相乗効果が見込めるようになります!
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広