Speaks vol.120
  <<気づき方②>>

前回のスピークスでは、
極端な状況の時には気づきを得やすいという内容をお伝えしました。

自分の例では、ファイナルのタイブレークで0-4の窮地から、
たまたま打ったスライスを相手がイージーミスしたのをきっかけに気づきを得、
逆転勝利したエピソードをご紹介しました。

極端な状況下においては、
いつもとは違うところへ意識が行くため、
普段なかなか気づけないことに、ハッと気づけたりするわけです。

しかし日常においては、極端な状況ばかりではありません。
そんな中で気づきを得るには、どうすればよいでしょうか?

あるお坊さんが説くところによると、
「ミカンを見なさい」といって、ある人に見せたといいます。
その人は「見ました」と答えました。

お坊さんは、「では、ミカンについて気づいたことを10個挙げなさい」と問うた
ところ、
答えられなかったといいます。

注意深く観察していれば、10個程度は挙げられたはず。
そのようにして、普段何気なく見過ごしているものの中から
気づきを得る練習をしてみるとよいのです。

例えばいつもプレーしているテニスコートのフェンスに掛けられている時計の枠
は、何色でしょうか?
普段からよく見ている時計のはずなのに、白か黒か銀色か、答えられない人もい
るでしょう。
次にコートへ来た時に、ぜひ確認してみてください。

あるいは信号機の青色は、右側か左側か?
今まで何度も見てきたはずですよね。
こんなところに注意深くなると、極端な状況下に置かれなくても、
さまざまなことに気づけるようになります。

テニスでも、どのように注意を向けるかで、気づきの質と量とが違ってきます。
上達が止まってしまう人は、意識を向けるスイッチの切り替えがうまくできてい
ません。

ボールに意識を向ける時は、ボールに意識を向ける。
一方、ボールは気にしなくてもいいから軸を意識してほしいのに、
打つことばかりに気を向けていて、
スイングをいつまでたっても進化させられないといったことがあよくあるのです。

ミカンでいえば、色なのか、形なのか、大きさなのか、質感なのかなど、
いろんな意識の向け方があります。
同じミカンを見ても注意の向け方が人によって異なるように、
同じテニスの練習をしていても、まるで違う意識の向け方が、人によりなされて
います。

意識を、自分の身体に向けるのか、
打ったボールに向けるのか、相手のいない空間に向けるのか、
その時々でスイッチを上手く切り替えることが大切です。

意識の向け方に、注意深くなりましょう。
そうすれば、気づきは自然と得られるようになってくるはずです。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広