Speaks vol.119
  <<気づき方①>>

「気づく」ということは、非常に重要です。
ひとつの気づきで、現状がガラリと変わり、物事の見え方が一変することすらあります。

では、どうすれば気づけるのか。
一体、どんな時に気づきを得やすいのか?
それは一言で言うと「極端」な状況の時。
つまり、「極端に良い」か、「極端に悪い」状況の時に、人は気づきを得やすくなります。

あるテレビ番組で、100万円をアタッシュケースに入れて
無事に最後まで持ち運べたらそれをもらえるゲームの企画が放送されていました。
通行人の中に10人のエキストラが混ざっていて、彼らにシールを貼られるとアウトとなりゲーム終了。
その時、100万円を持ち運んでいる2人組の注意深さといったら、半端ではありません(笑)。

100万円もらえるのは「極端に良い」けれど、捕まるのは「極端に悪い」というシチュエーション。
普段、まったく気にもとめない通行人の1人ひとりに対して非常に注意深くなり、さまざまなことに気づくのです。

この注意深さというのが、テニスにおいても気づきを得るためにとても重要です。
自分の例を振り返れば、ファイナルのタイブレークで0-4の窮地に立たされた試合がありました。
追い詰められて「何とかしないと!」という時に、たまたまスライスを打ったら相手がネットミスをした。
今まで、頑張ってスピンを打っていたのに、簡単なスライスをイージーミスしたのです。

この時、「あ、相手はスライスの対応が苦手なんだ」と、気づいたのです。
別の言い方をすれば、「スライスは効き目がない」という固定観念に縛られていたことに、気づいた。
それ以降、全部スライスで返したら、あっという間に勝てたのです。

それまでのポイントの中にも、
相手はこちらのスライスをミスしていたこともあったはずなのに見過ごしていて、
だけど窮地に追い込まれた「極端に悪い」状況の時に注意深さが引き出され、
「相手はスライスが苦手なんだ」と気づきを得て、勝つことができたというわけです。

「極端に良い時」「極端に悪い時」というのは、普段と違うから、
普段とは違うところへ意識が行くため、気づきを得やすい。
上達の止まる人は、意識を1カ所に留めて毎回同じことを繰り返すから、
堂々巡りを繰り返していると言えます。

「極端に良い時」というのは、自信を得やすく自分ができるレベルに気づけるチャンス。
「極端に悪い時」も、その人の真価が問われるという意味で気づきやすく、大事にすべきです。

とはいえ、「極端に良い時」「極端に悪い時」というのは、
その状況を自分自身で意図的に作り出すことができません。
ゆえに、意識が同じところに留まりやすいというのが、袋小路に迷い込む原因です。

では、普段の練習、生活の中から、どうすればさまざまなことに気づけるようになるのか?
次回はそのヒントをお伝えしたいと思います。
「気づく」ということは、現状をガラリと変え、物事の見方を一変する力があります。
意識のコントロールしだいで、気づきの質と量とが格段に違ってきます!

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広