Speaks vol.118
<<知の知>>
前回のスピークスでは、「無知の知」という話をしました。
自分が知らないということを、知っている。
できていると思い込んでいたことが、実はできていなかったと知る。
これが「無知の知」で、そのことについて無自覚な人よりも優れているというこ
とを、
ソクラテスのエピソードをもとにご紹介しました。
一方、いろんな人からいろんなテニスに関するアドバイスを受けて、
頭の中が混乱してしまう人がいます。
そういう人は、自分ができていないことにばかり目を向け、
不安にさいなまれがちです。
知っておいてもらいたいのは、
「無知の知」があれば、「知の知」もあるということ。
つまり、自分ができていることが分かっている。
知っているということを知っている、と捉えるのが「知の知」。
「知の知」がある人は、自分ができていることが客観的に分かるのです。
つまり、いろんな人からいろんなアドバイスを受けても、混乱してしまうことなく
「それはできているから必要ない」
「それは足りていないから導入しよう」という、取捨選択ができるのです。
ネガティブ思考な人に
「得意なことは何?」「長所は何?」と尋ねると、
「何もない!」と答えがちですが、人には必ず「ある」のです。
「積極性がない」という人には、「慎重さがある」と言い換えられるようなもの。
テニスの試合でも、サーブが全然入らないといっても、
それですべてがダメだといって放り出してしまうのではなく、
そのなかでも「バックハンドはどうにかなる」という部分に気づくことができれば、
打開策が見い出せるかもしれませんよね。
自分ができることを知る「知の知」。
あなたにも、すでにできることがたくさんあるはずです。
それに気づく「知の知」で以ってして、
自分のよさを、どんどん発揮していただければと思います!
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広