Speaks vol.117
  <<無知の知>>

自分では分かっている、できているつもりでも、
実際には案外分かっていない、できていないということは、よくあります。

分かっていない、できていないと、
自覚できているのであればまだまし。

しかし、自分では分かっている、できていると思い込んでいるから、
分かっていない、できていないことに、なかなか気づくことができない。

最も知恵のある者とされる哲学者のソクラテスは、
自分が賢者であることがよく分からないから、
世の中の賢者と話をして、そのことについて確かめたといいます。

その結果、自分だけが「自分は何も知らない」ことを自覚しているから、
ほかの無自覚な賢者に比べて優れているのだと、確認できたそうです。

これが、「無知の知」というものですが、テニスもまったく同じで、
分かっていない、できていないことが分かると、
無自覚だった領域から脱出することがかないます。

これはとても大切なことで、
自分できていなかったことが分かるだけで、
実は大変な成果を手に入れることになるのです。
分かっている、できていると、思い込んでいるのがいちばん厄介(笑)。

2軸がすぐにできるようになることが、重要なのではありません。
技術を獲得するためには反復する必要があるから、時間がかかります。

それよりも先に、「できていないことを知る」ことの方が、
一発目のアクションとして、より重要なのです。

「無知の知」を手に入れることが出発点。
自分が分かっている、できていると思い込んでいることが、
実は、「分かっていないんじゃないかな」「できていないのかも」と冷静にかえ
りみてみると、
新たな進化、成長のきっかけがつかめるかもしれません。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広