Speaks vol.113
  <<タフネス力2>>

自分よりも実力が数段上の3人から
「一緒にダブルスをしよう」と誘われたら、あなたならどうしますか?

その中の1人とは、プライベートも仲がいいから、断りにくい。
だけど実力がまったく及ばない自分。

こんな時、多くの人が「自分が足を引っ張ってしまう」「迷惑をかけてしまう」
というにふうに遠慮してしまいがちです。
これが、上達しない人のよくある反応パターン。

この反応パターンを変えることで、伸び悩みは克服できます。
迷惑をかけるといっても、迷惑がかからないように頑張ることで、
レベルは引き上げられるのですから。

実力が上の相手に対して、対等のポジションで考えると、
単に勝った、負けたの話になりますが、
いかに食らいついて自分のプレーを引き上げられるかが重要。

上手くなっていく人、試合で勝っていく人というのは、
「食らいつく」「しがみつく」というタフネス力があるのです。

自分よりも上手い人たちばかりの中に身を置くなど、
環境によっては自分のセルフイメージが小さくなる状況もあるけれど、
「食らいつく」「しがみつく」タフネス力があると、成果が変わってきます。

ミスすると迷惑がかかるから、ミスしないようにしようとすることで、
自分が引き上げられるのです。

前回のスピークスでも
「みんな、人の話を案外聞いていない」という話がありました。
スルーしてしまうのです。
「迷惑がかかるから遠慮する」というのも、スルーしているということ。
しかし、「食らいつく」「しがみつく」というのは、簡単にスルーしてしまわな
い姿勢です。

もちろん自分だって、例えばレッスンの拠点を置く馬込テニスクラブで、
ビッグ4のフェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マレーに混じって
ダブルスをやるとなると、正直イヤです(笑)。

見ている人たちに、
「黒岩コーチ、全然ボールに触れないね」
「空振りかよ!」なんて、言われてしまうに違いありません。
「普段偉そうに教えているのにね」とか(笑)。
だけどそんな中で頑張ったら、普通では手に入らない何かが手に入るのです。

誰もがビビり、誰もが環境によってはセルフイメージが小さくなるのだけれど、
そこをスルーしてしまわずに、いかにタフネス力を発揮できるかどうか。

テニスに限らず、仕事やプライベートでも適用される話です。
「ウッ」と感じる嫌な出来事や思いを、スルーしてしまわずに、
「食らいつく」「しがみつく」ことで、自分が引き上げられる。

そんな上達のメカニズムを、テニスなどの趣味を通じて実体験できるところに、
スポーツをやる価値があるのだと思います。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広