Speaks vol.100
  <<試合は、ショットを通じた自分と相手とのコミュニケーション>>

前回は、「聞いて」「聴いて」「訊く」という話を、
テニスレッスンの現場を具体例として挙げ、説明しました。

「聞く」は、聞こえているレベルで受け身的。
「聴く」は傾聴している能動的な姿勢。
さらに「訊く」は、尋ねることができる最もレベルの高い状態であるという内容
でした。

実はこれ、テニスの試合にも当てはまります。
試合で「聞いている」人は、
何となくボールを打っているだけの受け身的なプレー。
「聴いている」人は、相手のことをよく観察しているわけです。

そして「訊いている」人は、自分の放つショットによって、
相手に「どうなのよ?」と尋ねているレベルです。

試合は、ショットを通じた自分と相手とのコミュニケーションです。
自分のショットの調子がいい、悪いというだけでは、
一方的にしゃべっているようなもの。

相手のプレーもちゃんと聴いて、
さらには「このバック側に高く弾むボールはいかがですか?」と尋ねられるよう
になると、
相手のことがよく分かるようになるから、主導権はあなたが握ることになるのです。

自分の場合は、絶好調の時よりも、
少し調子が悪い時の方が、負けません。
それは、「自分はこうする!」という一方的な立場でプレーするのではなく、
「訊く」姿勢を重視できるようになるからだと思います。

自分の調子がいいのに負ける。
自分の調子は悪いのに勝つということは、よくあること。

調子がいいと一方的になり、つい、訊けなくなる、
調子が悪くなると、訊けるようになる、
この違いが結果として現れているのです。

これを機に、聞いているプレーヤーは聴くプレーヤーを、
聴くプレーヤーは訊けるプレーヤーを、目指してみてください。
このステップを踏むことが、強くなるプロセスと言えます。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広