Speaks vol.238
<<「見る」を鍛える>>
前回、前々回の2回に渡り、
「認知」と「判断」について説明しました。
自分がボールを打つ前に、
相手からどんなボールが飛んで来ているのかを「認知」し、
速度や球種、弾道の高さ、深さなどを「判断」するプロセスを経るから、
ナイスショットを打ち返せる結果が伴います。
私たちは、望む「結果」には直接的には携われないけれど、
必要な「プロセス」をちゃんと踏まえれば、
手に入れたい「結果」が伴う可能性は高まるのです。
ボールを打つという短い時間の中にも、
しかるべきプロセスが確かにある。
さて「認知」して「判断」するという、
ボールを打つためのプロセスを経るために、
「見る」ことの重要性についても、
改めて考えてみたいと思います。
テニスプレーヤーはおもに、
「視覚」から得た情報を頼りにプレーします。
料理人なら「味覚」、音楽家なら「聴覚」などと、
メインとして使う感覚は分野によってそれぞれでしょうけれども、
私たちテニスプレーヤーはおもに「視覚」を通じて、
認知、判断を行います。
要するに「見る」。
であれば「見る」を鍛えれば、
ボールを打つプロセスに必要な「認知」と「判断」も素早く的確に行えるから、
ナイスショットを打てる結果も伴いやすくなるでしょう。
ところが私たちは見ているようで、
案外見ていないのです。
後述しますが「打つ」ことに労力を費やしすぎるきらいがある人ほど、
「見る」が疎かになる傾向です。
「見る」といっても、
相手から飛んでくるボールだけを、
ただ見るのではありません。
リターン以外のショットでは、
先に自分が打った飛んでいくボールがどうなっているのかを見ます。
高さ、深さ、スピード、角度などが、
どうなっていて、相手を追い込めたのか、
あるいは相手に打ちやすいところで構えられているのかなど、
目の前で展開している状況を、よく「見る」。
そのうえで相手からどういうボールが返ってくるのかを「見る」と、
自然に予測もできるようになるでしょう。
見えていれば、「強く打たれそうだ」
「甘いボールが返ってきそうだ」などと分かり、
たとえば相手の打ったボールを認知して「浅そうだ」と判断できれば、
前へ移動するポジショニングもスムーズになります。
そういった一つひとつの積み重ねが最終的に、
相手からアンフォーストエラーを引き出したり、
自分からウイニングショットを放てたりする結果へとつながります。
これらは「見る」が適切に機能しているからこそ、
可能となるプレー。
「見る」などと言うと当たり前すぎる話で、
普段はあまり意識されませんけれども、
この機会に「『見る』を鍛える」をやってみてはいかがでしょうか。
鍛えるといっても、
本格的なビジョン・トレーニングに取り組む以前に、
まずは意識するだけで十分です。
「見える」という受動的な立場から、
「見る」という能動的な姿勢へチェンジする。
たとえば自分の打ったサーブが、
どんな速さ、角度、深さ、高さ、弾みなのか、
皆さんは見えているでしょうか?
前回もお伝えしたとおり、
打つことや打ち方に労力を費やしすぎて、
ラケットワークやフォームなどについてばかり考えてしまうと、
今回お伝えしている「見る」が、雑になってしまいかねません。
私たちのエネルギーが有限である以上、
やはり「見る」うえでも、
「労力の再配分」は有効になります。
打つことや打ち方へ費やす労力を減らせば、
その余力を、「見る」に利用できるからです。
「見る」が今以上に機能すれば、
認知と判断のプロセスも素早く的確に行えるから、
ナイスショットを打てる結果も伴いやすくなります。
交差点を右折する自動車の運転でいえば、
見通しの悪い状況を「認知」して、
右折できるか「判断」するプロセスを経るから、
ハンドリングの「操作」も上手くいくのでしたね。
この最終的に行う「操作」が、
テニスでいう「打つ」に相当します。
つまり「打つ」のは最後。
その前に「認知」と「判断」が必要であり、
それらは「見る」により達成されるという順序です。
もちろんラケットワークやフォームも、
テニスを上手くプレーする上で身につける必要はあるけれど、
費やす労力の配分率を見直してほしいのです。
これまで「打つ」だけをどうにかすることで、
テニスが上手くいくと考えていたにも関わらず、
思うような結果が伴わなかった人にとっては、
本質的なパラダイムシフトになるかもしれません。
ナイスショットの結果を得るために必要な、
「認知」と「判断」のプロセスを経るために、
まずは、よく「見る」。
上手くいけば文字どおり、
「見える世界」が一変する可能性があります!
解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広
さあ、このSpeaksを読んだらさっそく練習しましょう!!レッスンへGO!!
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