Speaks vol.73  <<頑張るためには……>>

東日本大震災では、多くの方々が犠牲になり、被災されました。
お悔やみ、お見舞い申し上げます。

……というのは簡単だけど、実際に何ができるかというと、
非被災者の私たちはほとんど無力です。

地震のあとに流れた「頑張ろう」というたくさんのCM。
言われた側は、何をどう頑張ればいいのか……。
「コーチングの観点から言うと」という断りをお許し願えるならば、
「頑張ろう」は、すでに頑張っている被災者の方々にとっての
一時的な気休めにしかなりません(度を超すと、重圧にも)。

というのも、スポーツやビジネスの世界だと、
単に「頑張ろう」と言うのは、言われた側としては「もう頑張っているよ!」と
反発したくなる気持ちが心の奥底では強まることが知られています。
ちなみに緊張を和らげるのが狙いの「頑張らなくてもいいよ」という言い方も、
実は突き離す印象を与えて、気遣った結果、裏目に出やすい言葉がけだと言われています。
「頑張ろう」という場合は、「どうすれば頑張れるのか」、
「頑張れるエナジーをどうやって与えられるか」を具体的に示すのがコーチングの技術になります。

例えばプレーヤーを奮起させてモチベーションを高める方法論としては、
何か良いところを見つけて「今のそれ、素晴らしいよ!」と認めること。
この一言が、「頑張ろう」と言わなくても自発的に頑張りたくなる力を生みます。

そういう意味では、今回、諸外国がたたえた「日本人の秩序」「助け合いの精神」といった報道には、
被災者の方々にとって生きる励みになったに違いありません。
少なくても「頑張ろう」というよりかは、何かしら勇気やプラスの感情、自分たちの誇りを、
厳しい環境に身を置きながらも感じることができたのではないかと想像します。

自分がモチベーションを上げたい時にも、
「頑張ろう」と意気込むだけではなかなかなやる気は高まりません。
自分の良いところを見つけて、自分で認めるような具体的な取り組みが合った方が効果的です。

あなたのいいところは、どこですか?
真面目なところ? 努力するところ? 調子のいいところ? 控えめなところ?
自分のいいところに自覚的になれば、モチベーションはおのずと高まります。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広