Speaks vol.232
  <<デュアルタスクの達人に学ぶ上手な視野の使い方>>

前々回のスピークスから、
テニスはデュアルタスクという話をしてきました。

ボールを見ながら走る。

走りながら打つ。

打ちながら次のポジションへ移動する。

テニスはこのように、
2つ以上のタスクを同時並行処理するスポーツです。

そしてこれらができるかどうかは、
生まれつきの才能や運動神経によるのではありません。

同時並行処理するトレーニングにより、
後天的に学習できるスキルです。

スキル獲得のための遊びとして、
右手のこぶしで右ヒザをトントンしながら、
左手のひらで左ヒザをスリスリする左右非対称の動作や、
必ず右手が勝つ両手ジャンケンなどを紹介してきました。

さて今回はテニスプレーヤーにとって重要な、
「視野に関するデュアルタスク」がテーマです。

結論から言うと同時並行処理にまだ慣れていない、
シングルタスク処理になりがちなプレーヤーは、
プレー中にボールだけしか見ていません。

その外見上から見て取れる特徴は、
たとえば対戦相手からフワリとチャンスボールが浮いて来たら、
顔ごとガッとボールに向けて、目でボールを追ってしまうのです。

これでは次に狙うコースも、
対戦相手のポジションも見えません。

その結果、狙うコースを外して打ったり、
みすみす対戦相手がいるところへ返球してしまったりするのです。
身につまされる経験はないでしょうか?

一方、視野のデュアルタスク処理ができるプレーヤーは、
顔ごとボールに向けません。

ボールは、キョロリと眼球を動かして中心視野で捉えつつ、
顔は大きくぶらさないようにして、
狙うコースや対戦相手のポジションを周辺視野に収めます。

だから、ボールを見ながらコースを狙う返球が可能となるのです。
みすみす相手のいるところへ打ち返してしまうこともありません。

両者の違いは、「ビジョン・トレーニング」を試してみると明らかです。

顔の前で左右に動かす人差し指を、目で追ってもらいます。

すると、シングルタスク処理の人は眼球を動かさずに、
顔ごと向きを変えたり、視線が遅れて動いたりしがちです。

顔ごと向きを変えるから、
前方を広く見ることができず、視野が狭くなります。

一方デュアルタスク処理の人は眼球を動かして、
顔は前方に向けたまま、視野を広く保ちます。

その達人を挙げるとすれば、
漫画『ゴルゴ13』の主人公であるデューク東郷。

プロのスナイパーである彼は、つねに危険と隣り合わせです。

だから今起きている出来事を必ず、
自分の視野の中に収めるように努めます。

そんな彼でも背後だけは見えません。

だから「俺の後ろに立つな」が決め台詞。

デューク東郷はデュアルタスクの達人だから、
見えない捨てる領域は捨てて、
見える領域のタスク処理に全神経を費やしていると言えるのです。
彼の仕事の成功率は、ほぼ100パーセントを誇ります。

言ってみればテニスも「戦い」ですから、
スナイパーよろしくつねに「危険と隣り合わせ」。

見えない背後は仕方がないとしても、
ボールだけを見ていたら、
相手に突然ショットを打ち込まれてしまいかねません。

テニスも、あたかも命懸けで「絶対に勝つ!」気持ちでいると、
見える領域のタスク処理に全神経を費やして視野が広がり、
ボールを見ながらコースを狙うデュアルタスク処理ができるようになるでしょう。

「負けてもいいや」というおざなりな気持ちだと、
そこまで神経が行き届かないから、
逆に視野が広がらないと言えます。

テニスを通じた視野のデュアルタスクトレーニングにより、
視神経の機能向上や、
眼球の動きを司る毛様体筋など眼筋の強化が図れるでしょう。

加齢とともに、視覚の衰えも気になるお年頃。
生涯スポーツのテニスだから、
生涯に渡る目の健康保全に役立てられます。

解説/スポーツラーニング・黒岩高徳
構成/テニスライター・吉田正広

さあ、このSpeaksを読んだらさっそく練習しましょう!!レッスンへGO!!
休日レッスンお申し込みページ
平日レッスンお申し込みページ
ナイターレッスンお申し込みページ
早朝レッスンお申し込みページ